タイトル、原題と邦題を並べてみました。以前にも、邦題にイチャモンつけた回がありましたね。今回もまたやります。『追憶と、踊りながら』なんてロマンチックな邦題で観る人を狭めず、そのまま『Lilting(リルティング)』で良かったのにー!
Lilting、意味わかんなかったですが、リルティングという響き+ポスターから受けた印象は、観て裏切られなかったし、こういう映画かという驚きも少しありました。想像する余地を残してくれた方が、興味も湧こうというもの。
Liltingは「何かの方に、リズミカルに動いていくこと」だそうで、ホン・カウ監督も「あまり使われない言葉ですが」と前置きして、「響きがとても気に入りました。映画の中の言葉や動き、カメラの動きやトーンも、その言葉を反映させています」とのこと。音のイメージだけでも雰囲気を伝える良いタイトルと思います。
映画では、まず中国系と思われる老婦人ジュンが登場します。息子カイと会話していると思ったら、カイの姿が消え、どうやら回想シーンと気がつきます。そんなところに、カイの友達リチャードが訪ねてきます。
英語を解さないジュンですが、中国語でポンポン言いたいことを言う、なかなか強気なお婆ちゃんで、ちょっとコミカルなところもあります。
現在と過去を行きつ戻りつしながら、しだいに、ジュン、リチャード、そしてカイの状況が浮かび上がってくるのもLiltingな感じなのですが、邦題、もうバレバレですね。
ジュンやカイと同じく中国系カンボジア人のカウ監督は、子供の頃に、ポル・ポトから逃れた母に連れられ、政治亡命者としてイギリスに来ました。その母が、この映画のベースにあるといいます。
世代間のギャップや、言葉の壁をはじめとする文化ギャップもモチーフになっていて、それがあるからこそ“追憶で踊る”ようなシーンも響いてくる映画です。
介護ホームにいるジュン(ペイペイ)を訪れるのは、息子カイ(レオン)のルームメイトであるリチャード(ウィショー)。何かと自分の面倒を見ようとするリチャードに、反発するジュンだが…。
監督 ホン・カウ
出演 ベン・ウィショー、チェン・ペイペイ、アンドリュー・レオン ほか
|
2015.5.22 掲載
|