二十歳になって間もないグザヴィエ・ドラン監督が『マイ・マザー』で満場の拍手を浴びたカンヌ国際映画祭は2009年。母1人、子1人の暮らしで反抗期を迎えた息子と母の激しい愛憎を、ユーモアを交えて描いた作品で、監督のほか、脚本、衣装デザインほか諸々を担当したドランが主演も務めました。
製作時にはまだティーンで、まさに、天才少年現る!という登場でしたが、半自伝的映画での監督デビューは、この先が難しいのではとも思わせました。
その後、自身の体験から離れたテーマや、原作がある脚本でさえ、素晴らしい作品を連発、そして、再び母子家庭の母と息子を描いた『Mommy/マミー』でカンヌ審査員特別賞!堂々の実力を証明してみせました。
今回の主人公はADHDで、感情の爆発を止められません。体格では、すっかり母を超え、母1人の力では、どうにもしようがなくなっている時に、はす向かいに住む休職中の教師である女性が関わってきます。
言葉を上手く発することができなくなっている教師ですが、この母と息子とは、心を通わすことができます。3人で乗り切っていけそうにも見えますが…。
ドラン監督は、この作品で、通常の横長ではなく、縦横の比率が1:1、真四角の画面を使っています。それが人物により焦点をあわせる効果をあげ、そらしません。幸せな時間の中に、哀しい予感を漂わせ、絶望の底に、明るさも見え、どうなるか予測できずに迎えるラストシーンは絶妙。これ以上の終わらせ方はなかったであろうというタイミング、画面で締めています。
まだまだ女盛りの母(ドルヴァル)は、15歳になったADHDの息子(ピロン)との2人暮らし。暴れる息子に手を焼く日々の中、はす向かいに住む女性(クレマン)と知り合う。休職中の教師だった女性の助けで、つかの間の平和が訪れるが…。
監督 グザヴィエ・ドラン
出演 アントワン=オリヴィエ・ピロン、アンヌ・ドルヴァル、スザンヌ・クレマン ほか
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2015.4.26 掲載
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