この映画の主人公、アラン・チューリングは、戦時中、ドイツ軍の暗号解読に挑んだイギリスの数学者。そして演じるのがベネディクト・カンバーバッチとくれば、カンバーバッチの当たり役、シャーロック・ホームズ的人物を思い浮かべる方もいらっしゃるのでは。だが、まるで違うタイプの天才だ。
ロンドン映画祭での会見時、カンバーバッチ自身が「彼はこれみよがしにコートを翻して歩いたりしない。とても静かでストイックだ」と、自身のシャーロックを自虐するような表現でチューリングを評した。
映画ではチューリングの子供時代も描かれる。一言で言えば変な子。現代では、アスペルガー症候群ではなかったかと見る人もいる。変な子が、そのまま大人になったようなチューリングは大きな功績を残しながら、その後、国家機密と個人的秘密で二重に閉ざされてしまう。
この映画でアカデミー賞脚色賞を受賞したグレアム・ムーアのスピーチは、今回の授賞式で最も感動を呼んだとも言われる。スピーチの中で馴染めないと感じていたという16歳での自殺未遂体験を明かしたムーアはこう続けた。「そして今ここにこうして立っている。自分がヘンテコだ、まわりと違う、どこにも馴染めないと感じている子たち、そう、君は違っている。そのままヘンテコでいるんだ、そして君の番が来たら、君がここに立つことになる」。
『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』3月13日公開 |
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第2次世界大戦時、イギリスでドイツ軍の暗号エニグマを解読するチームが組まれる。メンバーとなった天才的な数学者アラン・チューリング(カンバーバッチ)は、暗号解読機械製作にとりかかるが、チームの仲間にさえ理解されず…
監督 モルテン・ティルドゥム
出演 ベネディクト・カンバーバッチ、キーラ・ナイトレイ、マシュー・グード ほか
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2015.3.13 掲載
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