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チャイニーズ・フィルム・ノワール『薄氷の殺人』

昨年のベルリン国際映画祭で金熊、銀熊賞をダブル受賞した『薄氷の殺人』は、雰囲気たっぷりの映像で見せるクライム・サスペンス。ベルリンのコンペ作品中、最優秀作品に贈られるのが金熊賞、最優秀の監督、男優、女優といった各人への賞ほかが銀熊賞となります。『薄氷の殺人』は金熊賞と主演男優賞の銀熊賞とでダブルです。

銀熊賞を獲得したのは元刑事ジャンを演じるリャオ・ファン。写真ではスッキリなファンですが、映画中はヨレッとうらぶれて、男の悲哀を漂わせます。うらぶれ男を主人公に、夜の観覧車やネオンきらめく店などが舞台の暗い映像には、ディアオ・イーナン監督が往年のフィルム・ノワール(暗い雰囲気の犯罪映画)を見まくったのが活きています。ファム・ファタール(運命の女)となるのは、グイ・ルンメイ演じるウーという未亡人。

プラス、中国ならではの映像も効いています。殺人事件の鍵となる夜のスケートリンクから、雪の道に続く、寒々とした景色が、謎解きのサスペンスを盛り上げつつ、激しく極端な愛の話に転換していくあたりがお見事。


『薄氷の殺人』1月10日公開 ■ ■ ■

1999年夏、中国、華北地方各地の石炭工場で、バラバラ死体のパーツが見つかる。その捜査中の事故がもとで職を辞し、妻との離婚もあって、酒に溺れる日々を送っていた元刑事ジャン(ファン)は、2004年冬、同様の事件が起こったことを知る。独自に捜査を始めたジャンは、事件全てにかかわる疑惑の女ウー(ルンメイ)と出会い…

 監督 ディアオ・イーナン
 出演 リャオ・ファン、グイ・ルンメイ、ワン・シュエビン ほか

2015.1.13 掲載

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