WEB連載

出版物の案内

会社案内

おじさんファンタジー『福福荘の福ちゃん』

お笑いトリオ森三中のメンバーでれっきとした女性である大島美幸が、32歳の男性である主人公福田辰男を演じたのが話題の『福福荘の福ちゃん』。ですが、観れば、話題作りのために起用したのではないとわかります。

この10月にロンドンで開催されたレインダンス映画祭登場の藤田容介監督は「不細工でありながら、写真家の千穂に『すごく良い顔だ』と言われる両面がなくてはいけない。それに大島がピッタリ」と抜擢した理由を説明。確かに良い顔してます。

写真家の千穂というのは、福ちゃんが再会する中学時代の初恋の人。当時、福ちゃんに手酷い仕打ちを加え、そのせいで福ちゃんは女性恐怖症になっています。そんな過去にもかかわらず、福ちゃん、もう、ほんとに良い人。塗装工として働く職場でも親身になって新入りの面倒をみるし、自分の住む福福荘の困った住人にも積極的に手を貸します。

女性とつきあったことのない32歳の男性というと、そのことで鬱屈を抱えている人、ひょっとしたら人間嫌いな人とか思い浮かべてしまいます。でも、福ちゃんは違うんです。むしろ人間好き、人に限りなく優しく、人のために何かする手間も惜しみません。こういう役がはまる男性俳優を探すのは難しい気がします。「ちょっとおとぎ話のようにもしたかったという意味でも、女性がやったほうがリアルな生々しさがなくなってよかった」と藤田監督が言う通り大正解。大島はこの役で第18回ファンタジア国際映画祭最優秀主演女優賞を獲得しています。

この映画には郷愁を誘う雰囲気もあります。それは人情味のある福ちゃんのキャラクターによるものばかりではありません。セットではなく全てロケという舞台も一役買っています。どこか懐かしい福福荘も、住人もなく取り壊しを待つばかりのアパートを使ったとのこと。古き良き日本を見せながら、イギリスでも笑いをとったコメディ映画です。


『福福荘の福ちゃん』11月8日公開 ■ ■ ■

福福荘に住む塗装工の福ちゃんこと福田辰男(大島)は32歳の今まで女性とは縁がない。気の良い福ちゃんに女性を紹介しようという友人(荒川)の努力もむなしい日々の中、福ちゃんの前に中学時代の初恋の相手(水川)が現れ…

 監督 藤田容介
 出演 大島美幸、水川あさみ、荒川良々 ほか

2014.11.6 掲載

著者プロフィールバックナンバー
上に戻る