出演がサンドラ・ブロックにジョージ・クルーニー、舞台は宇宙、しかも3D。と、並んだだけでお腹いっぱい、見る気が失せた『ゼロ・グラビティ』だが、見といて良かった!
SFアドベンチャーというより、自分しか頼むもののない状況に置かれた人間を描いたものだった。
冒頭でスペース・シャトルが大破、外で作業中だったブロック演じる主人公と、クルーニー演じる同僚は放り出された状態になってしまう。そんな危機的状況でも余裕綽々に見えるというところで、クルーニーに並ぶ人はちょっと探せない。見る前、またクルーニーかなんて思ってしまって、ごめん。
相手を安心させるために、そう振舞っているところもあるのが泣かせる。だが、まもなく離れ離れになり、主人公は1人残される。
地球に無事戻れるのかを軸にした宇宙飛行士ものは、それだけで引きつける。頬にあたる風、足をかすめる水の流れが懐かしい、自分の町や国を超えた故郷としての地球という感覚には、いつでも感動させられる。
『ゼロ・グラビティ』も、そこが軸。ブロックが丸くなり宙に浮く姿が、胎児を連想させる場面がある。そのイメージが、その後の展開、そして最後の場面の見事な伏線になっている。母なる地球とへその緒はつながっているのか?その足で大地を踏みしめることはできるのか?
強さと脆さの両方を見せる主人公はブロックならでは。宇宙服を脱いだ時の、手足の健康的な伸びやかさだけで、宇宙服無しで歩ける地球の気持ち良さを思わせる。宇宙で働く者としての知性と身体能力を感じさせつつ、中年女性としての生活感もある。見る前、危機的状況のブロックも見飽きたなんて思ってしまって、ごめん。
持てる体力、知力、気力の全てを振り絞らなければ生きられない状況で、折れそうになる主人公の気力を呼び覚ますきっかけがまた良い。
ふだんは文句タラタラで暮らしがちな私も、地球で生を受けたこと自体が有難いという殊勝な気持ちに。人生を愛おしく感じさせてくれる映画。
『ゼロ・グラビティ』 12月13日公開 |
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スペース・シャトルの外で、作業中の2人(ブロックとクルーニー)。ロシアのミサイルが用済み衛星にあたったという連絡を最後に、ヒューストンからの通信が途絶える。まもなく宇宙塵が直撃、シャトルが大破、乗組員も死亡していることを発見した2人は…
監督 アルフォンソ・キュアロン
出演 サンドラ・ブロック、ジョージ・クルーニー ほか
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2013.12.13 掲載
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