今回は、まず、写真がクマさんになった理由から。それは、この『ヴィック・ムニーズ / ごみアートの奇跡』を見たのが、2010年のベルリン国際映画祭最終日だったからなのです。最終日がどんなものか、ベルリン映画祭の雰囲気なども感じていただけましたら幸いです。
このところ、木曜に始まり11日間、グルッと次の週を経た日曜に終わるというのが好例のベルリン映画祭。でも、実質、主なイベントは前日土曜の各賞発表、授賞式で終了しています。最終日の日曜は、言わばお客様感謝デー。受賞作や人気作が再上映されます。
私のお仕事も、授賞式後の受賞者会見を報じれば、ひとまず終わり。一度、うっかり、最終日の日曜に映画祭プレスセンターに行ったら、撤去作業の真っ只中。もちろん係りの人など1人もいません。前日までの活気が嘘のようで、祭りの後の寂しさをシミジミ感じてしまいました。
逆に言えば、日曜は、仕事を離れ、見たかった映画をゆっくり楽しめる日。2010年選んだ中の1本がこれ。上映館に入ってみて何か様子が違うと思ったら、観客の投票で選ばれる観客賞がこの作品で、その授賞式付上映になっていました。ちょっと得した気分で、花束を渡されるルーシー・ウォーカー監督に拍手を送ったものです。
写真を撮る機会もないだろうと、いつもの一眼レフは持たず、でも念のため持参のコンパクトカメラで撮ったような気がするのですが、見つけられず。あまり良い写真は撮れなかったので、消しちゃったのだったかな…というわけで、ベルリン名物クマさんです。当時はプレスセンターの入り口にあったのですが、そう言えば最近はないなあ。ちょっと通行の邪魔だったせい?
審査員ではなく、お客様が選ぶ観客賞は、見てよかったと素直に思える作品にいくことが多い気がします。この映画も、見た後の満足感では金熊賞受賞作にも負けないかも。
タフな暮らしをする人々が、アーティストのモデルを務めることによって変わっていく。かけがえのない、代わりのいない人として、じっと目を注がれることで、その人の中に人間としての尊厳が育っていくのが見えるよう。
『ヴィック・ムニーズ / ごみアートの奇跡』7月20日公開 |
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世界的なアーティストであるヴィック・ムニーズが、故郷ブラジルで一大プロジェクトにとりかかる。リオ・デ・ジャネイロ郊外にある世界最大のごみ集積場で、ごみのアートを作り出そうというものだ。モデルとなるのは、そのごみの山で再利用できる物を探し出すことを生業とする人々。材料となるのはごみ。ごみをモザイク上に並べて、それぞれの人の巨大ポートレートが出来上がっていく。その写真を作品としてオークションにかけ、収益をモデルとなった人々に還元しようというもの。お金を生み出す以前に、モデルをするという行為自体が人々に力を与え…
監督 ルーシー・ウォーカー
出演 ヴィック・ムニーズ ほか
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2013.7.25 掲載
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