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悪党?ヒーロー?『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』

ヨハン・フリードリヒ・ストルーエンセという実在の人物を主人公にした映画。デンマーク史上では罪人ということになっている。だが、この映画では、悪人としては描いていない。

ストルーエンセは、デンマーク王の侍医となり、政治でも力を得て、デンマークを思いのままにした。そのうえ、王妃を愛人にして、子まで生ませた。と、こういう書き方をすると、いかにも悪党だ。

だが、王は精神疾患のため、治世はもとより、王妃との関係さえ築けない状態。そして、15歳でイギリス王室から嫁いできた王妃は、デンマーク王室の中で孤独。そこにやってきたストルーエンセも、ドイツからの異邦人。と、細かい事情も加えたら、印象はだいぶ変わってくる。

ストルーエンセが推し進めた政策も、賄賂の禁止、拷問の禁止、医療施設の整備など、当時としては非常に民主的で、国民にとっては良政だった。それでも、急進的な余所者として、快くは思われなかった。王の病のことなど知らされていない国民には、王を操る悪者に見えたかもしれない。そこに王妃との不倫関係がとどめを刺す形で、悲劇的な結末へと一気になだれこむ。

ヒロイックにも見えるストルーエンセを演じるのは、『007 カジノ・ロワイヤル』の悪役で知名度を高めたデンマークの俳優マッツ・ミケルセン。現在公開中の『偽りなき者』でも、子どもの一言から、小児性愛の疑いをかけられる保育所勤務の男を演じている。ちょっと近寄りがたい雰囲気のニヒルな二枚目なのが、良い人?悪い人?と悩ませるような役に良くはまる。

一方のデンマーク王を演じるミッケル・フォルスガードは、これが映画初出演というデンマークの若手だ。滅茶苦茶な行動の中にもストルーエンセへの信頼を見せ、野卑なようでナイーブでもあるという難しい役どころを好演。ベルリン国際映画祭で銀熊賞(男優賞)を獲得した。もうひとつの銀熊賞(脚本賞)とでベルリンでは2冠となった。

脚本はニコライ・アーセル監督とラスマス・ヘイスターバングによるもの。現実のストルーエンセは、この映画のような誤解されたヒーローではなかったかもしれないが、政策が良いものだったことは事実。いけ好かない奴による良政より、好ましい人物による悪政の方が、支持を得やすいものかしら?

『ロイヤル・アフェア 愛と欲望の王宮』4月27日公開 ■ ■ ■

1766年、15歳のイギリスのプリンセス、キャロライン(ヴィキャンデル)は、デンマーク国王クリスチャン7世(フォルスガード)のもとに嫁ぐ。だが、クリスチャンは、キャロラインを気にかけることもなく、女遊びに現を抜かす。理想を胸に秘め、ドイツからやってきたスクルーエンセ(ミケルセン)はクリスチャンの侍医、そして、キャロラインの相談相手ともなって…

 監督 ニコライ・アーセル
 出演 マッツ・ミケルセン、アリシア・ヴィキャンデル、ミッケル・フォルスガード ほか

2013.4.27 掲載

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