マイク・リー監督いわく「連帯と孤独、家族、親と子、年をとることについての映画」。ジム・ブロードベンドはじめリー作品ではお馴染みの俳優陣が、それぞれの人生の秋を見せる。
ブロードベンドとルース・シーンが演じる夫妻と、妻の同僚で友人でもある独身女性メアリーが対照的だ。息子も大人になり、実りの時を迎えている夫妻に対し、夫妻より少し下という位の年齢のメアリーの焦りようが可笑しくもせつない。
メアリーを演じたレスリー・マンヴィルは「ある種、悲劇的。望んだわけでもなく、子どもも持たずにきてしまったのだから」と評する。
自分ではまだまだイケルつもりのメアリーだが、高望み、かつ行き当たりばったりのようでもある。酔った勢いで、夫妻の息子にモーションをかけるも、上手くかわされたりもする。
夫妻の友人には、メアリーの対抗馬のような独身男性もいて、そちらは傍目にもはっきりとオーバーウェイト、オーバードリンク気味で、気落ちしている様子を隠そうともしない。
一皮むけば似たような状況のメアリーだが、がぶり寄りの勢いで言い寄るこの男性を足蹴にするのも、男女の恋愛感の違いに目を向けさせて興味深い。
男性は切羽詰ると適当なところで手を打とうとするのに対し、女性はいつまでも理想を下げないもの?それどころか、目が肥えてか、自分の独身時期の長さを正当化するためか、理想を上げていく人もいそうだ。
だが、家庭があれば幸福というものでもない。円満な夫妻の周辺にいる寂しい独身者だけでなく、円満ではない殺伐とした家庭も描かれる。
悲劇的なのは、子どもも持たず、の方ではなく、望んだわけでもなく、の方だろう。誰もが、多かれ少なかれ望んだわけでもない状況を抱えつつ、老いの時を迎えていくとも言える。
仕事についても、それぞれに情熱を傾けた仕事でキャリアを積んできた夫妻と、その実、それほど仕事にも身が入ってなさそうなメアリーという対比もある。
いろいろなことが、望んだわけでもなく、そうなってしまったメアリーが、最後に見せる表情が圧巻だ。笑顔の後の気が抜けたような顔、「今まで何やってきたんだろう私…」、「これからどうしよう…」などなど、様々な思いが透けて見えるような、まさに台詞以上に物語る顔で映画は終わる。マンヴィルは、この映画で複数の女優賞を獲得している。
仲睦まじい初老の夫婦の家庭を中心に、その家族と友人たちが季節の移り変わりとともに描かれる。笑わせながら、家族、人生、仕事について考えさせる秀作。
監督 マイク・リー
出演 レスリー・マンヴィル、ジム・ブロードベンド、ルース・シーン ほか
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2011.11.8 掲載
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