好きなこと、得意なことをうれしそうにやっている人を見るのは、それだけで楽しい。
一時代を築いたレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが好きな曲を紹介する様子は、大好きなおもちゃを与えられた子どもみたいにうれしそうだ。60代半ばのペイジがギター小僧のように見えて、微笑ましい。
エッジは、「基はたったこれだけ」というギターの地味で単調なフレーズを、ほら、この通り!とばかりに機材にかけてU2のインパクトのある音にしてみせる。子どもの頃にお手製でギターを作ったというくらいだから、技術系、職人系ギタリストなのかも。
ホワイト・ストライプスはじめ複数のバンドを組むジャック・ホワイトも、ドラムセットやギターでベッドが置けなくなった子ども部屋の話を聞けば、今があるのも納得できる。
自分でも意外だったのは、一番面白かったのがホワイトだったこと。
すでに評価も定まっていて、名曲の数々も残しているレッド・ツェッペリンやU2と違って、それほど馴染みがないのがホワイトだった。ホワイト・ストライプスのヒット曲に聞き覚えがあるくらいで、ジャック・ホワイトがやっているほかのバンドはあまりよく知らない。そのホワイト・ストライプスも解散してしまったし。
というわけで、それぞれのファンのみならず、知らないという方でも、きっと楽しめるはず。
ホワイトはギターやほかの楽器のほかにボーカルもこなし、率いるそれぞれのバンドのフロントマンだ。
話している内容や、やってみせていることは、エッジやペイジの方が興味深かったりもするのに、面白く見せてしまうのが、さすがと思わせる。
時々、映画の会見でも似たような印象を持つことがある。話している内容に関わらず、主演俳優はパッとひきつけてしまうことがあって、感心する。主演と言っても、必ずしも美男美女とは限らないから、見た目の良さとは別のことのように思う。
主演やフロントマンを務める人には、いわゆるキャラが立っている人が多いということか。
という3人のギタリストそれぞれのルーツとこれまでをたどる部分と、そろってのジャムセッションに向けての部分からなり、いやがうえにもセッションへの期待が高まる。『不都合な真実』でアカデミー賞ドキュメンタリー長編賞も受賞しているデイヴィス・グッゲンハイム監督の、組み立てのうまさだ。
「その場で起こることを大事に撮った」というセッションがピタリと決まると、監督とエッジが観客とともに鑑賞していたベルリン映画祭の会場では大きな拍手が巻き起こった。
『ゲット・ラウド ジ・エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト×ライフ×ギター』 9月9日公開 |
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世代も個性もそれぞれの3人のギタリストが自分のルーツをたどり、音楽を語る。懐かしい映像や音楽の秘密も明かされるが、何と言っても圧巻はジャムセッション。ギターで通じる3人が見られる。
監督 デイヴィス・グッゲンハイム
出演 エッジ、ジミー・ペイジ、ジャック・ホワイト ほか
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2011.9.9 掲載
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