元英首相と、その回想録を書くゴーストライターの物語。
イラク戦争時の英首相ときて、戦争絡みの疑惑はあるわ、参戦で人気が失墜していくわで、どこからどう見てもトニー・ブレア元首相を連想させる。
それを社会派ドラマではなく、堂々のエンターティメントにしているのがミソ。ハラハラ、ドキドキのブラックな政治ミステリーだ。
主人公のゴーストライターを演じるのがユアン・マクレガーというのは、見る前から異議なし。
どんなに本が売れても、自分の手柄として名乗ることはできない日陰の身の主人公という、ヒーローらしくないヒーローの感じだ。
それに比べてピアース・ブロスナンの元首相は、重みが足りないのでは?と思ったのだが…
ブロスナンの軽みは欠点ではない、と思い始めたのはここ数年のこと。
007をやっていた頃は、失礼ながら、つまらない二枚目と思っていた。それが、『マタドール』の侘しい殺し屋役で笑わせてもらい、『マンマ・ミーア!』で脱力の歌声を聴くにいたって、すっかり見直した。
自分の二枚目振りをパロッちゃうみたいな役で、生き生きする人のようだ。
それが、またシリアスな元首相役とは、と思ってしまったのは間違いだった。ちゃんと要人らしく見えるうえ、うっすら漂う軽みも、そういうことだったのか…という結末が待っている。
この結末のために、軽みのあるブロスナンを配したのなら、たいしたものだ。
ロマン・ポランスキー監督は、ホラー『ローズマリーの赤ちゃん』、文芸大作『テス』、実話を基にした感動作『戦場のピアニスト』などなど幅広い名作を生み出してきた巨匠には違いないけど、あんまりな作品もあって、けっこう当たりハズレがある。
今回は、当たりと思います。
『ゴーストライター』8月27日より順次公開 |
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元英首相ラング(ブロスナン)の回想録執筆を引き受けたゴーストライター(マクレガー)が、自分の前任者の不審な死の謎を解こうと動き出す。一方、ラングには戦争犯罪の嫌疑がかかる。謎を追うゴーストライターが、その答えにまさに届いたかという時に…。
監督 ロマン・ポランスキー
出演 ユアン・マクレガー、ピアース・ブロスナン ほか
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2011.8.27 掲載
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