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堕ちていく美女がお好き?ダレン・アロノフスキー監督『ブラック・スワン』

ダレン・アロノフスキー監督は、この映画で何をしたかったんだろう?
  と言っても、意味のわからない、つまらない映画というわけではない。プリマドンナを目指すバレリーナが、もがき苦しみ…というストーリーはわかりやすく、見せ場もたくさん。面白く描かれすぎていて、バレエの世界の厳しさとか、女同志のライバル心がメイン・テーマとは思えない。では何?

元プリマドンナ(ウィノナ・ライダー)は入院してしまうし、主人公(ナタリー・ポートマン)も常軌を逸していくが、「心の病がテーマ?」には「そうではない」とアロノフスキー監督。いろいろ言ってたけど、納得できたのは、会見ではなく、その後、たまたま過去の作品を見た時だった。
  『レクイエム・フォー・ドリーム』というドラッグ中毒のカップルを主人公にした2000年の作品。主人公(ジェニファー・コネリー)が後半に見せる綺麗を通り越して怖いような化粧、きわどい性描写、刺青や傷口のえぐい映像など、ブラック・スワンと似たシーンがいっぱい。プリマドンナを目指すバレリーナと、ドラッグでボロボロになっていく女性という違いこそあれ、主人公のたどる経緯や描き方がそっくり。コネリーも、ポートマン同様、少女時代にデビューして、その美しさで騒がれた女優でもある。
  美女が堕ちていくのを描くのが好きなのね。テーマでないとしても、裏の動機にはなってると思う。

ドラッグ中毒カップルの映画と言えば、『キャンディ』というニール・アームフィールド監督作品もあった。女性(アビー・コーニッシュ)が身を売るようになるのはいっしょでも、カップルの関係の方に重心が置かれた作品だ。ヒース・レジャーが演じた男性の惨めさが印象的だった。
  見比べると、描き方の違いがくっきり。アロノフスキー監督は、普通ではない世界を描くのが上手い。修羅場を、すごい映像世界に変えて見せてくれる。
  リアリスティックなキャンディの方が好みだけど、暗い内容でも楽しめてしまう点では、レクイエム・フォー・ドリームの方が勝っているかもしれない。アロノフスキー監督作品には、いい意味でのけれん味がある。

ブラック・スワンでも、あんなことや、こんなことまでするポートマンが見られるし、ほかにもミラ・クニスはじめ美女がいっぱい。案の定、団員に手を出すフランス人監督役のヴァンサン・カッセルもはまってる。動機はどうあれ、面白く見せることに関しては職人技のアロノフスキー監督だ。

『ブラック・スワン』5月11日公開 ■ ■ ■

白鳥の湖の主役の座を狙うバレリーナ(ポートマン)。役を射止めるには、性的に解放されるよう示唆する監督(カッセル)や、味方か敵かわからない団員(クニス)、自分に夢を託す母(ハーシー)に囲まれ、練習を続けるうちに…。

 監督 ダレン・アロノフスキー
 出演 ナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス、バーバラ・ハーシー ほか

2011.5.13 掲載

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