登場するのは、廃墟とボロをまとった人ばかり。陰々滅々の映画である。
気の滅入るような映像の中、興味をつなぐのが父と息子の物語となっていることだ。
とてつもないことが起こったらしい荒涼とした地で、父(ヴィゴ・モーテンセン)は、10歳位かという子(コディ・スミット=マクフィー)も守らなくてはならない。人肉を食う人々まで現れている状況で、ただ生きることさえ困難な中、父は子の心も育てようとする。
果たして、親子はモラルを失うことなく生き延びられるのか?
今は亡き美しい妻(シャリーズ・セロン)が出てくる回想シーン以外は、みなさんドロドロ。ガイ・ピアースはわかったが、ロバート・デュヴァルなんて、せっかくの名優を見過ごしそうになったほど煤けてた。
CGを使いたくないという監督の意向で、見渡す限りの荒地に廃墟が作られた。体力的にもだが、心理的にもきつい役となっている子役のコディくんを、皆が気遣いつつの撮影だったようだ。
上手い子役にかなうものはない。コディの真っ直ぐな目は、それを曇らせることなく育てあげたいという父への共感を生む。最初、雰囲気のあまりの暗さに、引き気味だったものが、次第に、親子を応援する気持ちで、観てしまう。
原作はピューリッツァー賞受賞の同名小説。
重いテーマでもあるし、会見が軽いノリになるとは期待しなかったが、それにしてもモーテンセンは生真面目だった。
質問されたことには、正面から、それも言葉を尽くして答えるというふうで、一つ一つの答えが、すごく長くなる。会見の大半が、考え考えしながらつむぐモーテンセンの一人語り。
涙しつつの試写直後だった会見が終わる頃には、人類滅亡の危機の際は是非このお方についていこう、という気になっていました。
動植物の多くが死に絶えるような大災害が起こったらしい地で、父(ヴィゴ・モーテンセン)と子(コディ・スミット=マクフィー)は、暖かく過ごしやすいであろうという希望を抱いて、南を目指す。
生き残るために暴徒と化した人々を避け、食物、隠れ場所を探しながらの旅の中でさえ、父は子に良き心を説く。父と子の過酷な旅の終わりは…
監督 ジョン・ヒルコート
出演 ヴィゴ・モーテンセン、コディ・スミット=マクフィー、ロバート・デュヴァル ほか
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2010.6.21 掲載
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