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たとえ、キアヌがいなくても…『50歳の恋愛白書』

危うく日本公開を見過ごすところだった。原題は似ても似つかぬザ・プライベート・ライブズ・オブ・ピッパ・リー。というか、この映画、恋愛もの?

本作は50歳になろうかという女性の自分探しのお話。男女の絡みもあるが、そちらがメインではない。
  美しく年齢を重ねた良家の奥様ふうピッパ(ロビン・ライト・ペン)の、おだやかな暮らしとは程遠い少女時代が語られながら、本人も気づかないうちに起こっている現在のピッパの問題行動へと話が展開。そのことに気づいてしまうのが、30代も半ばをすぎて実家に戻ってきた隣人の息子クリス(キアヌ・リーヴス)。

予想通り、この2人がいい感じになっていくのだが、そこが私にはちょっと不満。このクリスの存在なしに、自力だけで進んでくれればもっと共感できたのに。そのクリスを強調するような邦題も気に食わないわけだ。
  でも、映画的には正解。
  自分の胸に入れてるキリストの刺青に向かって、ピッパを祈らせたりするクリスのピントはずれの真っ直ぐさが話を面白くしている。
  ピッパも、玉の輿ねらいの結婚とか、その生活にも厭きてクリスを見つけたのではない。たまたま、ちょうどいいタイミングで、ちょうどいい男性が現われる。ラッキーな女性なのだ。

50歳位の女優と30代半ばの男優の組み合わせも、選びようによっては生臭くなりそうだが、実年齢では今年44歳になるロビンと46歳になるキアヌの配役はセーフ。お似合いのきれいなカップルだ。
 『フォレスト・ガンプ/一期一会』や『シーズ・ソー・ラブリー』でも、グチャグチャの人生をしっかり受け止めて生きる女性を好演していたロビンはもとより、キアヌも本作では意外にいい。整いすぎの二枚目が、クリスのずれた感じにうまくはまっている。『マトリックス』や『スピード』みたいなヒーローはもういいから、これからはズレ男路線でいってほしいくらいだ。

ところで、フォレスト・ガンプの邦題、一期一会がついてたのね。ちょっとベタな気も…
  ベタな分だけ、日本の配給会社が売りたいポイントはわかりそう。
  本作に戻ると、シンプルながら含みのある原題は、ミラー監督自身による原作小説の題名をそのまま使ったもの。ライフとせずにライブズと複数にしたあたり、良家の奥様の顔とは別の顔を持つピッパを予感させる。ちなみにミラー監督は『セールスマンの死』などを書いたアーサー・ミラーの娘でもある。
  そのミラー監督のうまいタイトルにたいして、邦題は50歳でもまだいけると思いたい女心をくすぐる作戦?
  女性のみなさま、くすぐられないでくださいね。
  本作がいいのは、50歳を迎えようというピッパが恋愛できることではなく、自分の道を行こうとするところ。キアヌみたいな男性が登場せずとも、しっかり我が道を究めましょう。

『50歳の恋愛白書』2月5日公開 ■ ■ ■

精神的に不安定な母親の元から逃れるも、デカダンスな暮らしに落ち込んでしまったピッパは、父親ほども歳の違う男性リーと出会い結婚、2人の子どもも大人になろうかという歳月のうちに、今では、すっかり落ち着いた奥様になっているが…
  本作のプロデューサーの1人はブラッド・ピット。プロデューサー参加+パートナー同伴のプレミアを夢見てしまいました。(ご存知のようにブラピのパートナーはアンジェリーナ・ジョーリー、ミラー監督の夫がダニエル・デイ=ルイスで主演ロビンの夫がショーン・ペン 、それぞれ今のところはですが)

 監督 レベッカ・ミラー
 出演 ロビン・ライト・ペン、キアヌ・リーヴス、ウィノナ・ライダー、ブレイク・ライヴリー ほか

2010.2.3 掲載

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