矢野真木人殺人事件・裁判の状況
1. 矢野真木人殺人事件刑事裁判
矢野真木人殺人事件の刑事裁判は高松地方裁判所で行われています。平成18年4月18日(火)が第一回公判で、第二回公判が5月24日(水)、そして6月23日に第三回公判が開催されて、判決が言い渡される事になっています。これまで2回の公判が開催されました。
2. 第一回公判の概容
第一回公判で、私たちは初めて憎き矢野真木人の殺人犯である野津純一を見ました。事前に聞かされていたとおり、184センチ100キロの大男でした。私が一番驚いたのは彼がハンサムだったことです。「中学校の時卓球をして正選手になれずに、登校拒否を始めた」と母親は証言しています。バスケットボールかサッカーか野球の選手を目指しておれば、女の子にも持てて、今頃は人生バラ色ではなかったろうかと思いました。
野津純一は人定質問には「はい」「いいえ」で答えていました。ところが検察官が「殺意の有無」の質問をしてないのに「(矢野真木人に対しては)殺意はありませんでした」とそこだけ文章で発言しました。この言葉を聞いて、傍聴席にいた私たち夫婦は、純一が「予め、充分に考えた上で、準備していた証言だ」と確信しました。
野津純一の診断名の一つは「慢性鑑定不能型統合失調症」です。これまでの裁判では「統合失調症」という病名さえつけば、ほとんどの場合殺人事件を起こしても「不起訴」もしくは「無罪」でした。それで、私たちは「統合失調症でも、法的因果関係の認識はできる」「統合失調症でも善悪の判断はできている」と証明するしかないのです。
検察官は既に「統合失調症だから心神耗弱で刑罰を軽減する理由に該当する」と私どもに言ってました。それで、私どもは「統合失調症でも、厳罰が相当だ」と第二回公判では主張することにしました。
ところが、第二回公判の前日に、野津純一の両親が私たちが不在の時に訪ねてきており、「家を売った金を支払うので、純一の罪を軽くしてください」というメモ書きを残してありました。それで、私は徹夜して、予め作成していた「意見陳述書」を大幅に書き改めました。
3. 矢野真木人殺人事件第二回公判の概容
矢野真木人殺人事件の第2回公判が5月24日に高松地方裁判所でありました。残念ながら、我が息子は子供ではないために、全国ニュースとはなりません。細々と、主に四国内で報道されています。
公判で私どもは、「野津純一を一生外に出さないでください」と、お願いしましたが、検察官は「無期懲役が相当であるが、精神障害で心神耗弱にある」として、罪一等を軽減して、懲役30年を求刑しました。
相手方の弁護士は、「病院が、きちんとして管理をしていたならば、殺人事件は起こらなかった、犯人は殺意を否認しているので、傷害致死(最高でも20年)で、更に精神障害で大幅に罪を減じるべきであると・・」主張しました。この論理だと、判決は10年ぐらいで、実際には6-7年後に犯人は刑期を終えて再び社会の一員となります。その時の彼は45才ぐらいでしょう。この年齢で自由人となれば、彼は第2第3の矢野真木人を出す可能性があります。
判決は6月23日に言い渡されます。
犯人は、反社会性人格障害者です。これは「殺人、人身傷害、放火、強姦・婦女暴行などを繰り返した上で、詐病(自分は精神障害者だから刑法第39条で無罪になるべきだとの主張で、精神障害の振りをする)、他人が迷惑を受けて困っているのを見て喜ぶ」という人格の障害です。
犯人の野津純一は、矢野真木人を殺しました、病院内や街頭で他人に殴りかかりました、強姦と婦女暴行はしたことは無いと思われます、17才の時にシンナーを吸っていて自宅と隣家数件を焼失しました。それでも、彼には前科がないのです。すなわち、(精神障害者であるとして過去の悪行が)経歴に残らなかった人間です。
それで、今回も弁護士は、「前科がない人間だ」、「初めての犯罪だから、罪を軽くすべきだ・・」と主張しました。
犯人の両親は、裁判に合わせて、高松市の自宅を売却しました。そして「自宅を処分したお金を支払うから、息子の刑を軽減して下さい・・」というストーリーを準備してありました。
両親はこの男が不始末をするたびに、被害者や関係者を拝み倒して、そしてお金を支払って、穏便に、穏便にと、後始末していました。それで彼は前科がない無垢な人間として人間として法廷に立っています。
このような状況を踏まえた上で、私たちの意見陳述をお読み下さい。
→ 矢野啓司 意見陳述書
→ 矢野千恵 意見陳述書
4. 予想される判決への対応
野津純一に対する高松地方裁判所の判決は6月23日に下されます。そこで、問題なのは、この第一審で裁判が終わるのか、それとも高等裁判所、最高裁判所へと上程されるのかという問題です。
野津純一が期待しているとおり「殺意が否認」されて「傷害致死」で判決が降りることになれば、短期刑となります。この場合私たちは「殺意が否認されること」を認める訳には参りません。「事前に矢野真木人を知らず、通りすがりの無差別殺人だから、罪が軽減される」という論理を承伏することができないのです。当然上級審で争うことになります。私たちは「正義に反する」と言い続けることになります。
さて、野津純一は「精神障害者」です。これまでの判決では精神障害者への刑罰は軽いものでした。それが(たった一人しか殺してないのに)「無期懲役」もしくは「懲役30年」となると、前例が無い、重い刑罰になります。それで、野津純一の両親が「重すぎる、純一はかわいそうだ」と公言することになると、野津側から上告されることになります。私の意見陳述における野津夫妻に対する発言は、このことを踏まえた上で「厳罰でも、上告をあきらめてください」という誘い水です。
もし、上級審に提訴されることになると困るのは、「いわゆる人権派弁護士」が出てくる可能性です。「いわゆる人権派弁護士」は何であれ、「精神障害者の犯罪は全て無罪であるべき」との主張です。また法廷闘争も、無理難題を押しつけてきます。皆さんご存じでしょう、山口光市の母子強姦殺人裁判では、最高裁判所の審議を弁護士が正統な理由にならないつまらない理由で欠席しました。私が一番恐れるのは、このような弁護士が「今は、俺の番だ」としゃしゃり出てくることです。不毛の議論につき合わされるからです。
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