第61回 「中学受験の意義」について
 
皆さんこんにちは。今回も連載をご覧下さりありがとうございます。 
  連載更新が滞り、お待たせして申し訳ございませんでした。本年も皆様のお役に立てる情報を発信して参りますので、どうぞよろしくお願い致します。 
民主党政権になり約4ヶ月が経過、「子ども手当て」創設、「高校授業料無償化」など、新しい政策が次々打ち出されています。 
  世界的に見れば、経済を中心にまだ混乱の中にあり、保護者の皆さんも不安が大きいことと思います。ですが、このような中でも、「確かな情報」を発信している方が多くいるので、そういう情報を信じていただけたら、と願います。 
  もちろん、私も、その「確かな情報」として恥ずかしくないものをお届け致します。 
昨年、新しい発信源としてツィッターを始めました。よろしければ、フォローをお願い致します。 
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今回は「中学受験の意義」について考えます。私立はもちろん、最近は「公立中高一貫校」が全国各地に設置されているので、「低額で質の高い教育を受けられる」と期待した方々が、子どもに受験させる場合が増えています(公立一貫校の場合、現在でも、義務教育の中学生3年分は学費が不要です)。 
中学入試は、今月末から本番が始まります。お子さんの大半が人生初の受験で、プレッシャーも大きいと思います。保護者の皆さんも緊張が高まると思いますが、どうか、「中学受験は人生の最初の試練、結果がどうあれ、わが子の前に開かれた道を、将来に良いものに整えていく」と、気持ちを大きく構えていただきたいです。保護者の皆さんが緊張していると、お子さんにも伝わり、良くない影響を与えますので。 
なお、受験生のご家庭の皆さんは、連載の第41回・48回も併せてご参照下さい。また、今年は新型インフルエンザの流行で、特例で「(新型)インフルエンザで欠席した場合に限り、後日の受験を認める」学校が多いようです。募集要項や志望校のウェブサイトなど、また、学校に直接問い合わせてご確認をしておかれることをおすすめします。 
中学受験を考える目的は、子どもの、 
- 学習指導要領の内容より充実した、高度な学習
 
- 落ち着いた環境での授業
 
- 人格形成でも良い影響
 
 
これらを受けられる、といったメリットを考えてだと思います。公立一貫校、私立校ともに、一般の公立中学で定められている以上の授業時間を確保し、高度な内容を学習するのが一般的です。 
また、公立一貫校、私立校ともに、「子どもにしっかり学力をつけさせ、人格形成でも良い影響を受けさせたい」と考える家庭の子どもが集まります。地元の公立校ですと、たとえば、「高級車に乗るのに給食費を払わない」など、モラルの欠けている保護者もいて、そういう家庭の子どもから悪影響を受けることも考えられます。公立一貫校や私立校の場合、仮にモラルに欠けた家庭の子どもが入学しても、親子とも学校の指導を拒否したままでいることは、まず認められません(後ほど改めて書きます)。 
私立校に行かせる場合(公立校なら義務教育なので学費が不要)、学費を払ってこのメリットを受けられる環境を子どもに与えているわけです。 
ですが、お子さんにそれがよく伝わっているでしょうか。 
  生徒たちと向き合っていても、「なぜ私立校に来ているのか」自分なりに認識できている子どもは、その子なりに精一杯努力をしていると感じます。その姿勢が見えれば、教員たちはたとえテストで満点でなくても、その子どもの努力を正しく評価しているはずです。 
ところが、子どもは、怠けたい、とか面倒くさい、という気持ちを持つことがよくあるので、「こんな勉強はしたくない」とか、「怒られるけれど、努力したくない」という考えを抱きがちです。そういう仲間がクラスや部活動で何人かいると、たちまち怠けるようになります。 
  もちろん、教員や保護者(の大半)はそのようなことは許さず指導します。でも、それから必死に逃げ続けようと、課題を出さない、授業中にさぼろうとする、などの生徒も多く存在するのです。 
あまりに子どもの逃げ方が悪質で、更に、再三注意しても改善が見られない場合、義務教育なので中学3年間は在籍を認めても、併設高校には進学できない、との宣告をされます。万引きなどの犯罪行為などをすれば、直ちに退学、というのが一般的でしょう。 
現在、公・私立校ともに、少子化で生徒集めに多くの努力を費やしています。ですので、学校の評判や進学実績を非常に重視しており、「あの学校は勉強しなくても併設高校に行ける」、「万引きなどをしても併設高校に進学できる」という風評を生み出すことは許されないからです。 
そこまで行かなくても、公立中高一貫校と私立中学の多くは、高校の内容を先取り学習しています。中学時代に逃げ回っていたツケは、必ず高校で大きなしっぺ返しとなり、その段階で慌てても遅れを取り戻すのは非常に大変です。これでは、苦労して中学受験をした意味があるのでしょうか。 
中学受験を考える家庭では、「なぜ中学受験をするのか」という意義を、親子で改めて確認し、また、中学在学中に子どもが怠けそうになったら、きちんと親子で話し合って、いただきたいです。更に、今回の記事とともに、第53回連載も、併せてご覧下さい。 
なお、お子さんが怠けていないのに成績が不安だ、という場合は、ご遠慮なく学校に尋ねてみて下さい。義務教育期間なので、私立校でも、簡単に「自己努力不足です」と切り捨てず、補習などの相談に乗ってくれるはずです。 
 
【今回のまとめ】 
- 公立中高一貫校の増加で、中学受験を考える家庭が全国的に出ている
 
- 中学受験は人生の最初の試練、結果がどうなっても、それがわが子の将来にとって良い道になると信じてほしい
 
- 中学受験をする意義が子どもに正しく伝わっていないと、子どもは怠けたがり、最悪の場合、併設高校に進学できなくなる
 
- 子どもが怠けていないのに成績が不安なら、学校に補習を依頼するなど、積極的に相談して構わない
 
 
2010.1.14 掲載 
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