第48回 「進学先の決め方」について
皆さんこんにちは。
先日、東京都杉並区で「公立中学での夜間塾開講」というできごとがありました。塾と学校をめぐる問題については、改めて別の回に書こうと考えておりますので、今回は触れないことにします。パートナーが大手を中心とした予備校で、また、私が学校で教える者として、思うところは山のようにありますので
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今回は「進学先の決め方」について考えます。
大学入試はセンター試験も終わり、受験生は最後の追い込みの時期でしょう。東京では公・私立ともに高校では推薦入試が終わり、あとは一般入試を残すのみ。そして、私立中学は2/1に入試が始まります。
少子化、また、保護者の経済的負担の大きさも手伝って、最近は祖父母が受験費用や予備校・塾の費用を高額負担することも珍しくないようです。
そして、少子化の影響で、子どもに目を向けるあまり、大学受験でも、保護者が大学のオープンキャンパスに行って、受験生本人より積極的にパンフレットをもらってくる、などの場合も出て来ているようです。
このような状況に、私は強い危機感を感じます。その理由は、「誰が行く学校、誰のための学校なのか」ということです。
学校で学ぶのは、あくまでも受験生本人です。保護者や祖父母ではありません。費用を出すだけなら問題ありませんが、「○○学園に受かるように」などと、自分の昔の憧れの学校のイメージを語ってみたり、パンフレットをもらってくることで、「お祖母ちゃん(お父さん)は○○学園に私を行かせたいのか」と、プレッシャーに感じたり、また、反発を感じる子どもも多いのです。
反発を感じた場合、言える子どもはまだしも、うまく口に出せない子どももいます。その時は口に出せなくても、あとでストレスから不登校などとなり、反発が形を変えて表れたり、学校生活でトラブルが起きた場合、「お祖母ちゃんが私に○○学園に行けって言ったから、お祖母ちゃんのせいだ!」と、爆発することにもつながりかねません。
保護者や祖父母が、子どもの適性や性格を見て、また、「現在の学校の校風、進路指導、学習方針など」を知った上で、「こういう理由で○○学園がいいと思う」と言うのなら、良いのです。でも、そうではなく、単にイメージで話をしていると、子どもがわから見れば、「自分のことを理解していないのに」、「学校の今の実態を知らないのに」となってしまいます。
連載第12回でも書いたことがありますが、「昔のイメージで学校を選ぶ」ほど、危険なことはありません。保護者の思春期に聞いたこともなかった学校が台頭し、また、10年ほど前まで何の問題もなかった学校が、生徒は集まらない、授業崩壊しているなどの危機的状況になっています。そのような中で、昔のイメージで学校を選んで、いったい何のプラスになるのでしょうか。
もしも、祖父母が費用を負担してくれるのなら、祖父母と保護者との間で、「昔のイメージで学校選びをさせない」ことを確認し合いましょう。そして、子どもに、すべて受験が終わってから、「お金を出してくれてありがとう」と言わせましょう。保護者以外に、自分のために多額のお金を負担してくれる人がいる、ということを認識させるのは、子どもの成長にとって重要なことです。
また、私立中学受験の場合、東京では小学6年生の4人に1人程度が受ける、という状況になっています。少子化で子どもが少ないのに、子どもは大変な試練を受けています。そのような中で、お子さんの思いがけない受験結果に、保護者がご自分の学歴と比べたり、ショックを受けたりして、子どもを責めてしまう方もいるかもしれません。
ですが、どこで成長期が来るかは「子どもによって異なる」のです。早いうちから伸びる子もいれば、高校生になってグンと実力をつけ、その結果自信も伴い、それまでとはさまざまな面で見違えるようになる子どももいます。
グンと伸びるまでは、根気を持って、お子さんに知識、運動など、その時期にふさわしいこと、子どもの興味あることを精いっぱい取り組ませるようにして下さい。
ですので、中学受験の結果が人生のすべて、のように思わないでいただきたいのです。結果がどうであれ、「その後の人生へのステップ」と捉え、その後の生活を充実して、楽しく送れるように励ましていただきたいです。切り替えのできないまま私立校に進み、その学校になじめず、公立校に転校したり、また、不登校などになってしまう場合も少なくないのですから。
最後に、どんな受験でも、あくまでも主役は「受験生=子ども」です。お子さんが複数いても、数年前と今年とは同じ状況とは言えません。そのことを肝に銘じ、「お子さんの適性、性格に合っていて、お子さんの良いところを伸ばし、欠点を正してくれそうな」進学先選びをしていただけたら、そして、保護者をはじめ周囲の方々は、そのように助言していただけたら、と心から願います。
受験の結果、新しい学校に進学すると、どんな場合でも(たとえ一流大学に受かった場合でも)、その後遊んでしまい、同級生と雲泥の差がついてしまうことがあります。それは子どもや周囲のモチベーションによるところも大きいです。結局、大事なのは、「受験の結果だけではなく、進学してから、どのような気持ちで、充実した生活を過ごすか」ということなのだと、多くの生徒たちと接していて、私が実感していることです。充実した生活を過ごしていれば、必ず道は明るい方向に開けていきます。
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【今回のまとめ】
- 受験の主役は、あくまでも「受験生=子ども」。受験生の適性、性格に合っていて、良いところを伸ばし、欠点を正してくれそうな学校に行かせる。
- 保護者や祖父母の持つ、昔のイメージや憧れで学校を選ぶことは、断じて行なってはならない。
- 子どもにとって成長期は異なるから、伸びる時期も異なる。グンと伸びるまで、周囲は根気を持ちつつ、知識、運動など、その時期にふさわしいこと、子どもの興味あることを精いっぱい取り組ませる。
- 受験の結果だけではなく、進学してから、どのような気持ちで、充実した生活を過ごすか、が大事。それが、その後の明るい未来につながっていく。
2008.2.1 掲載
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