(前回からつづく)
明治期には、
(3)紙幣を普通するの法を立て (1899 公儀所日誌)
という用例があるが、これは現代感覚では「普及する(させる)」の方が自然な感じがする。
最新の新明解国語辞典(第七版)によれば、「普通」とは
- その類のものとしてごく平均的な水準を保っていて、取り立てて問題とする点がない。
ことである。
この定義を裏づける面白い用例を見つけた。
(4)普通に生きて普通に宮仕えをしていれば、 普通に俸禄が貰えて普通に天寿を全うできるんですよ。何が面白いのか、手前にゃわかりません (鈴木輝一郎 1960)
まさに「普通に」の普通の用法である。この文をよく見ると、四回出てくる「普通に」はいずれも動詞を修飾し、リズム感を出している。
しかし、近年の用例(前回掲載)
(1)アクションシーンは普通に面白かったので何も考えずに楽しめますよ。(Yahoo!ブログ2008)
をあらためて見ると、「平均的な水準」ではなく、「期待通り」に「面白かった」文脈である。
「普通に」が形容詞「面白い」を修飾している。
どうも「普通に+形容詞」が新しい表現になりやすく、現時点では違和感を持つ人がまだ多いと言える。(ブログ「ぱどぷら」より/つづく)
[参考文献]
山田忠雄・他編2012『新明解国語辞典 第七版』三省堂
北原保雄・他編2001『日本国語大辞典 はん-ほうへ 第二版』小学館
2018.4.15 掲載
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