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揺れ動く日本語~MOVIN'JAPANESE

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第96回「インスタ映(栄)え」


最近テレビ番組で、信じられない会話を耳にした。
ブティックで知人同士が一緒に服を選んでいる。

「これとこれ、どっちがいいと思う?」
「う~ん、こっちの方がバエルよ~。」

すっかりおなじみになったこのインスタ映え(*)という言葉。2017年の流行語大賞にも選ばれた。 (*) 以下、「映え」表記に統一する)

写真中心のSNS、インスタグラム(instagram)に載せた時に見映えの良い写真のことを「インスタ映えがする」とユーザーが言い出したことから、今や他のSNSも含めて「インスタ映え」と言う。

インスタ映えの「バエ」は後要素の「ハエ(ル)」という発音が前要素と連結されたことによって、言いやすいように「ハ」の音が濁音化したものだ。専門用語では連濁という。どういう時に濁音化するのかは、なかなか一言では言い難いが、前述の若者は元々の「ハエル」という言葉を使ったことがないことが推測される。「見映え」、「出来映え」も同様に考えているのだろうか。

このエッセイでは、若者が生み出す言葉の使用を一概に批判するわけではなく、その発生過程を研究し、言葉の変化を見るのを楽しんでいるのだが、さすがにこの「バエル」には驚いた。なんと、Yahoo!知恵袋では、「映えるはバエルと読むんですか?」という質問・回答が大真面目に語られているのだ。

今度、どんどん世代交代が進んでいくと、ファッション業界で「あなたをバエさせる〇〇〇」などというキャッチコピーが出てくるかもしれない。

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いかにも国民的社会現象のように言われているが、フォロワーは全国民のわずか4%弱。

[参考文献]
Yahoo!知恵袋(映えるの読み方って「はえる」か「ばえる」どっちですか?教えてください)
■新井弘奏・他2011『日本語教育能力試験完全攻略ガイド第二版』ヒューマンアカデミー

2018.10.15 掲載

著者プロフィール
マーク秋山[MARK AKIYAMA] : 1975年、早稲田大学商学部卒業後、日本楽器製造株式会社(現ヤマハ)に入社。楽器用ソフトの企画制作、出版物編集、著作権・法務関連のリーダーを務めた。小学校の壁新聞時代から一貫して、言葉、表記、レイアウトに大きな関心を持つ。定年退職後、日本語学、日本語教育学を学び、現在は愛知国際学院非常勤講師としてアジアからの留学志望者に日本語を教えている。会社員時代からオールディーズ系のバンドで演奏活動を行い、エレキベースを弾く。
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