WEB連載

出版物の案内

会社案内

揺れ動く日本語~MOVIN'JAPANESE

著者プロフィールバックナンバー

第95回「忖度(そんたく)する」(その2)


つまり、「はかる」は物理的な計測から論理的な計画へと意味が広がってきたと言える。

さて、今回政治的に話題になる前から、「忖度」はネガティヴな文脈で使われることが多かった。本来は「他人の心を推測する」だけの意味なのだが、専(もっぱ)ら

  • 「上役の心をさぐり、上役にとって適当な行動をとる。」

という意味に特定して使われる。

どうして、上役の本意を直接聞かないで、探るかというと、ひとつは上役と意見を同じにして出世したいからである。ふたつ目には、その探る方の人が出世できる可能性があるからだ。上役に阿(おもね)るだけでなく自分が一段上(あるいはトップ)の立場にあるとしたら、どう行動するかを考えるからである。それが適切な方向に行けばよいのだが、時として、よからぬ判断をしてしまうことがある。

従って一般職(主に女性)は出世などどうでもよいから上役の本意など意に介さず行動するのだ。

一般的な辞書の「はかる」よりは「さぐる」の方がわかりやすい。この場合の「適当」という言葉も本来の意味より、ネガティヴな意味で使われることが多い。

  • あいつの仕事の仕方はテキトーで困る

などである。

この場合、「テキトー」とカタカナで書いた方がニュアンスが出る。
「忖度」も漢字を知らなかった人が多いのだから、「ソンタク」の方がよいかもしれない。

photo
いくら馴染みのない漢字だからと言って、これではとても「そんたく」とは読めないが。。。

[参考文献]
■石川忠久2000『新漢文体系』明治書院
■和田利政・金田弘『国語要説 五訂版』大日本図書

2018.9.15 掲載

著者プロフィール
マーク秋山[MARK AKIYAMA] : 1975年、早稲田大学商学部卒業後、日本楽器製造株式会社(現ヤマハ)に入社。楽器用ソフトの企画制作、出版物編集、著作権・法務関連のリーダーを務めた。小学校の壁新聞時代から一貫して、言葉、表記、レイアウトに大きな関心を持つ。定年退職後、日本語学、日本語教育学を学び、現在は愛知国際学院非常勤講師としてアジアからの留学志望者に日本語を教えている。会社員時代からオールディーズ系のバンドで演奏活動を行い、エレキベースを弾く。
上に戻る