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揺れ動く日本語~MOVIN'JAPANESE

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第90回「普通に」(2)


前回からつづく
明治期には、

(3)紙幣を普通するの法を立て (1899 公儀所日誌)

という用例があるが、これは現代感覚では「普及する(させる)」の方が自然な感じがする。

最新の新明解国語辞典(第七版)によれば、「普通」とは

  • その類のものとしてごく平均的な水準を保っていて、取り立てて問題とする点がない。

ことである。

この定義を裏づける面白い用例を見つけた。

(4)普通に生きて普通に宮仕えをしていれば、 普通に俸禄が貰えて普通に天寿を全うできるんですよ。何が面白いのか、手前にゃわかりません (鈴木輝一郎 1960)

まさに「普通に」の普通の用法である。この文をよく見ると、四回出てくる「普通に」はいずれも動詞を修飾し、リズム感を出している。

しかし、近年の用例(前回掲載)

(1)アクションシーンは普通に面白かったので何も考えずに楽しめますよ。(Yahoo!ブログ2008)

をあらためて見ると、「平均的な水準」ではなく、「期待通り」に「面白かった」文脈である。

「普通に」が形容詞「面白い」を修飾している。

どうも「普通に+形容詞」が新しい表現になりやすく、現時点では違和感を持つ人がまだ多いと言える。(ブログ「ぱどぷら」より/つづく)

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[参考文献]
山田忠雄・他編2012『新明解国語辞典 第七版』三省堂
北原保雄・他編2001『日本国語大辞典 はん-ほうへ 第二版』小学館

2018.4.15 掲載

著者プロフィール
マーク秋山[MARK AKIYAMA] : 1975年、早稲田大学商学部卒業後、日本楽器製造株式会社(現ヤマハ)に入社。楽器用ソフトの企画制作、出版物編集、著作権・法務関連のリーダーを務めた。小学校の壁新聞時代から一貫して、言葉、表記、レイアウトに大きな関心を持つ。定年退職後、日本語学、日本語教育学を学び、現在は愛知国際学院非常勤講師としてアジアからの留学志望者に日本語を教えている。会社員時代からオールディーズ系のバンドで演奏活動を行い、エレキベースを弾く。
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