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揺れ動く日本語~MOVIN'JAPANESE

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第78回「ほぼほぼ」(2)


前回からつづく
「ほぼほぼ」は他の多くの言葉と同じように、話し言葉から広まり、書き言葉でも普通の表現になっていくと思われる。冒頭の川澄選手の例はブログなので、話し言葉風書き言葉での使用であり、書き言葉へ浸透する過度期の典型例だ。

そもそも、「ほぼ」の語源は何であろう。日本国語大辞典によれば、

  • 語源説① ホソボソ(細々)の義
  • 語源説② ホノボノ(仄々)の義

と推定されるのだそうだが、この説によると語源が元々畳語になっていることに驚く。
「ホソボソ」(または「ホノボノ」)の短縮形が「ホボ」になったと推定されるわけだ。

しかし、冒頭の川澄選手や谷垣氏のコメントでの「ほぼほぼ」は、

  • 細くて今にも絶えそうだ(ホソボソ)
  • 人の心を和ませる雰囲気がある(ホノボノ)*1

などのニュアンスは微塵も感じられない。
どちらかというと、「だいたい同じような」という意味で使われている。

一方、古くは「ひとあし、ひとあし」を意味する「ほほ」[歩歩]という言葉もあり、

  • 『屠所におもむく羊の歩々の思ひを是なほし』(空也和讃12C後か?)*2

という用例がある。

この「ほほ」が変化して「ほぼ」になったということも推測される。。。。つまり、一歩一歩の歩みを表す言葉が、

  • 建物は{ほぼ、ほぼほぼ}完成に近づいている。

のような進捗程度を示すのに適切だと言える。

元々畳語を出自とする「ほぼ」が、さらに重なって「ほぼほぼ」になってきたという面白い現象に気づく。そして元々「ほぼ」を強調するために繰り返していたのが、繰り返すのが「ほぼ」あたりまえになってしまったのだ。 (この稿おわり)

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*1 新明解国語辞典第七版
*2 日本大辞典刊行会(2004)『日本国語大辞典第二版』小学館

[参考文献]
2016年6月30日付朝日新聞所収『よく聞く言葉 ・ほぼほぼ広まった?』
日本大辞典刊行会(2004)『日本国語大辞典第二版』小学館
和田利政・金田弘(2009)『国語要説五訂版』大日本図書(株)
山田忠雄・柴田武(2012)『新明解国語辞典第七版』(株)三省堂

2017.4.15 掲載

著者プロフィール
マーク秋山[MARK AKIYAMA] : 1975年、早稲田大学商学部卒業後、日本楽器製造株式会社(現ヤマハ)に入社。楽器用ソフトの企画制作、出版物編集、著作権・法務関連のリーダーを務めた。小学校の壁新聞時代から一貫して、言葉、表記、レイアウトに大きな関心を持つ。定年退職後、日本語学、日本語教育学を学び、現在は愛知国際学院非常勤講師としてアジアからの留学志望者に日本語を教えている。会社員時代からオールディーズ系のバンドで演奏活動を行い、エレキベースを弾く。
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