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第89回「普通に」(1)


(1)原作のことは、全く考えないほうが良いと思います。アクションシーンは普通に面白かったので何も考えずに楽しめますよ。(Yahoo!ブログ2008)

というような表現がどんどん増えている。

従来の感覚では、「面白かった」のであれば、「普通」ではないのでは?という疑念が生まれる。しかし、「普通に」は「面白かった」の程度を表していると考えると納得がいく。「たいへん面白かった」のではなく、「ある程度」は面白かったのか、あるいは「予想通り」面白かったのかであろう。

(2)居候の身なので大きなことは言えません。普通においしいのでいいですけどね。~くろすけ~(Yahoo!知恵袋 2005)

というように、「普通においしい」もよく使われる。この場合は直前文が「普通に」の意味合いを規定している。「居候」なのだから、過大な要望は致しません、つまり「少し」おいしければよいのである。国立国語研究所のデータベースで検索すると、この文例のように、2005年頃から急に用例が増える。

例文(1)、(2)の「普通に」は共に副詞的用法である。しかし、以前は助詞「に」を付加せず「普通」がそのまま副詞として用いられることが多かった。辞書で「普通に」を見出し語としている例は見あたらず、「普通」だけが載っており、品詞は名詞、副詞、辞書によっては形容動詞の語幹(普通だ)としている。

今、話題にしている「普通に」は形容動詞の活用形(連用形)とも言えるし、新たに派生した副詞とも言える。明治期には「普通する」というサ変動詞(サ行変格活用動詞)も「普通」だったらしい。漢語に接尾語をつけると、いろいろ変身できるのだ。(つづく)

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[参考文献]
■現代日本語書き言葉均衡コーパス・国立国語研究所

2018.3.15 掲載



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