(前回からつづく)
「ほぼほぼ」は他の多くの言葉と同じように、話し言葉から広まり、書き言葉でも普通の表現になっていくと思われる。冒頭の川澄選手の例はブログなので、話し言葉風書き言葉での使用であり、書き言葉へ浸透する過度期の典型例だ。
そもそも、「ほぼ」の語源は何であろう。日本国語大辞典によれば、
- 語源説① ホソボソ(細々)の義
- 語源説② ホノボノ(仄々)の義
と推定されるのだそうだが、この説によると語源が元々畳語になっていることに驚く。
「ホソボソ」(または「ホノボノ」)の短縮形が「ホボ」になったと推定されるわけだ。
しかし、冒頭の川澄選手や谷垣氏のコメントでの「ほぼほぼ」は、
- 細くて今にも絶えそうだ(ホソボソ)
- 人の心を和ませる雰囲気がある(ホノボノ)*1
などのニュアンスは微塵も感じられない。
どちらかというと、「だいたい同じような」という意味で使われている。
一方、古くは「ひとあし、ひとあし」を意味する「ほほ」[歩歩]という言葉もあり、
- 『屠所におもむく羊の歩々の思ひを是なほし』(空也和讃12C後か?)*2
という用例がある。
この「ほほ」が変化して「ほぼ」になったということも推測される。。。。つまり、一歩一歩の歩みを表す言葉が、
のような進捗程度を示すのに適切だと言える。
元々畳語を出自とする「ほぼ」が、さらに重なって「ほぼほぼ」になってきたという面白い現象に気づく。そして元々「ほぼ」を強調するために繰り返していたのが、繰り返すのが「ほぼ」あたりまえになってしまったのだ。
(この稿おわり)
*1 新明解国語辞典第七版
*2 日本大辞典刊行会(2004)『日本国語大辞典第二版』小学館
[参考文献]
2016年6月30日付朝日新聞所収『よく聞く言葉 ・ほぼほぼ広まった?』
日本大辞典刊行会(2004)『日本国語大辞典第二版』小学館
和田利政・金田弘(2009)『国語要説五訂版』大日本図書(株)
山田忠雄・柴田武(2012)『新明解国語辞典第七版』(株)三省堂
2017.4.15 掲載
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