(前回からつづく)
さらに話し言葉で速く何回も発音すると、「つ」[ts]「ち」[t∫]というように母音が無声化してしまう。さらに発音するスピードを速めると、「もりすし」のような音に近づき、録音時にヒス音が発生することもあり、聞くに堪えない。筆者は今までそう考えていた。
ここで、手許の辞書を引いてみる。
- 新明解国語辞典第七版・・・「もりつち」(「もりど」は記載なし)
- 三省堂国語辞典第五版・・・「もりつち」(土木関係では「もりど」)
「もりど」・・・👉もりつち
・・・となっている。
ここで注目すべきは後者の「土木関係では「もりど」」という記載である。つまり、一般的には「もりつち」だが、特定の集団では「もりど」だという説明である。業界用語であり、言語学的に言うと集団語である。
小池知事も本件を論ずる際、最初の内は「もりつち」と言っていたらしい*1が、土木部門も部内や外注先との会話で「もりど」に変わっていったのに違いない。どうして関係者同士で「もりつち」と言わないのかというと、使う頻度が多いからであろう。何回も発音するには「もりど」の方がラクだからである。。。。という前述の論理が裏付けられるのである。
いずれにしても、「もりど」という読み方は定着してしまった。辞書での記載は現状では「もりつち」を規範としているが、発行している各社は「もりど」を基本とするか、あくまでも言葉の成り立ちを重視して、
- もりつち
- もりど(現状ではこちら主流)
という記載にするかの選択が迫られるであろう。(この稿終わり)
*1 ロゼッタストーンの弘中百合子氏による情報である。
[参考文献]
鹿島央(あたる)(2002)『日本語教育をめざすひとのための~基礎から学ぶ音声学』スリーエーネットワーク
佐々木幹夫(2011)『日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第2版』ヒューマンアカデミー
鎮守の森プロジェクトHP
2017.2.15 掲載
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