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第64回 「ご飯に行く」(2)


前回から続く
  また、メンバーによっては「ご飯に行った」としても、実質は「(酒を)呑む」のが主体になることも多い。(*1) 特に女子会のような場合、実際は「呑む」であっても、「ご飯に行く」表現の方が使われることが多い。男女同権の意識が進んだ現在ではあるが、やはり女性メンバーだけで酒が目的だと、どうしても軽い罪悪感があるからだ。

そもそも、「御飯(ごはん)」は漢語の「飯(はん)」に接頭語「御」をつけた丁寧語である。一般的に丁寧にするための接頭語「お」は大和言葉に、「御」は漢語に用いるが、「飯(はん)」の場合は「御」を付加することによって、女性的で、くだけた感じのする言葉になるので、芸能人の間での使用が進んだと見る。筆者が先ほどからこのエッセイで「御」という漢字を使わずに「ご飯」と書いている所以(ゆえん)である。

元々の大和言葉は「めし」だが、これは男言葉、乱暴な言葉という感覚になってしまっていた。それに比べ、「食事」は改まった感じがする。
  ビジネスマンが重要な取引先の担当者を誘う時は、

  • 今度、食事でもいかがですか?
  • が一般的であり、「めし」という乱暴な言い方をしないのはもちろん、個人的 にそれほど親しくないうちは、「ご飯」もあまりしっくり来ない。
      この場合の「食事」は今後の取引を円滑に進めるための手段であり、食べることが目的ではないので、「ご飯」ではあまりにも日常的になってしまうのだ。

    また、一般的なサラリーマンが昼食時に同僚や部下を誘う時は、

  • さあ、食事(昼めし)でも行こうか?
  • と言うが、これも「ご飯」はまだ一般的ではない。
      しかし、今年の新卒社員の出世頭が管理職になり始める十数年後には、このような場合でも、「ご飯」が多用されるようになるに違いない。

    (この稿終わり)

    (*1)酒の場合は、どうも「飲む」より「呑む」の方が趣(おもむき)がある。

    2016.2.15 掲載



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