「○○さんとはよくご飯に行くんですよぉー」
などと使う。テレビを見ていると、「食事に行く」ではなく、「ご飯に行く」という表現ばかり出てくるようになった。
元々、従来の感覚では、外食する際に「ご飯」という言葉はあまり使われなかった。「ご飯」とは狭義では「米を炊いたもの」であり、「炊いた米を茶碗によそったもの」である。
ただ、大方の庶民が貧しかった昔は、おかずが少なかったので、ご飯=主食であり、それが食事全体の意味になってしまったのである。
つまり、
ご飯(広義)=ご飯(狭義)+おかず
となり、家の中では、「さあ、そろそろご飯にしようか」という言い方が昔からあるが、外食する場合は「(外へ)ご飯に行こうか」とは言わず、「食事に行こうか」と言うのが普通だった。しかし、十年くらい前から芸能人が「ご飯に行こうか」と言うようになった。
従来の感覚では「食事」はレストランのようなところ、「ご飯」を外で使うにしても定食屋のようなところという感覚であったのが、変化してきたのだ。多くの言葉の変化でみられるカジュアル化の一端である。
ただし、「ご飯」という言葉そのものには、「食べる」意が含まれていないので、本来は「食事」の代わりに「ご飯」を使うのであれば、
ご飯を食べに行く⇒ご飯に行く
という短縮プロセスが必要なのだが、いきなり、「ご飯に行く」が普及してしまった。
(つづく)
2016.1.15 掲載
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