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第40回 「〜させていただきます」(2)


(前回からつづく)
  次に「ご説明させていただきます」はどうだろう。本来は説明したくないけど、世論が記者会見などで説明者をして説明させる。。。なのか、前々から説明したくて悶々としていたが、ようやく、世論やマスコミが説明することを許してくれたから。。。なのか、これもいろいろ考えられる。本来は「説明いたします」で充分であるのだが、世間の心証をよくするために多用されるようになった。

ところで、「こんど、〜〜に参加させていただきます。」と言った時、聞き手はそのニュアンスをどうとらえるだろうか?

  1. 私など、その催し物に参加できるような身分、立場ではないのだが、許されて参加します。(主催者による使役、あるいは申請許諾による使役)
    ・・・下から目線:つまり力不足だが、参加なのか、

  2. 私は、ほんとうはその催し物に参加するのが本意ではないのだが、しかたなく参加します。
    ・・・上から目線:つまり役不足だが、参加なのか、
       (強制による使役、あるいは指示による使役)

どちらにも解釈できる便利な「〜させていただきます」ではある。
  発言する側としてはとにかく丁寧な感じを付加しているつもりが、聞く側は穿(うが)った見方をしたくなる表現ではある。
  古くからの用法で、妻から夫に対する「しばらく実家に帰らせていただきます」という慣用表現がある。
  これなどは慇懃無礼用法の見本のような表現だ。

ところで、「帰る」のような五段活用動詞(注1*)の場合は、未然形「帰ら」+「せていただきます」という形が自然であり、動詞+「させていただきます」にはならない。
  先日、私が行った理容室で担当スタッフが途中で交代する際、「ただ今から、変わらさせていただきます。」と言っていた。
    「変わる」も五段活用動詞なのだが、わざわざ、「変わら」+「さ」+「せていただきます」と言うように「さ」を挿入していた。「させていただきます」の過剰普及により、とにかく何でも「させていただきます」を付加する人が増えた。「さ」入れ傾向も強まり、それ自体すでに自然な表現だと思う人も多い。(つづく)

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注1*)日本語教育界では動詞を三つのグループに分け、五段活用動詞を第1グループの動詞と呼ぶ。

[参考文献]
原沢伊都夫2010「考えて、解いて、学ぶ 日本語教育の文法」スリーエーネットワーク


2014.2.15 掲載



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