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第21回 絆−きずな(3)


(前回からつづく)
  一方、漢字表記の「絆」は日本漢字能力検定協会が募集した「2011年・今年の漢字」で最多票を獲得した。
  この字は筆者が小中学生時代の指針であった当用漢字音訓表(1946年)にはなかったし、その後の常用漢字表(1981年)にも採用されず、2010年に追加された常用漢字にも見当たらない。
  元々、ルポルタージュやドキュメントものの記事や番組にはよく使われていた言葉だったが、東日本大震災後に急に檜舞台に引き上げられた漢字と言えよう。皮肉にも2010年11月に内閣告示された4か月足らず後に大震災が発生してしまった。もっともNHK(日本放送協会)や新聞協会が使用する漢字一覧表には以前から掲載されており、教育行政の総本山よりもマスコミの方が民意を反映していたことになる。
  文部科学省が「絆」だけを急遽常用漢字に追加するという小回りの利いた対応をするとは思えないから、当分の間はこの漢字を義務教育で正式には教えなくてもよいことになる。これほど、巷に「絆」が溢れているのに。。。だ。

2012年5月、沖縄で開かれた太平洋・島サミット(日本・太平洋諸島フォーラム首脳会談)では、「沖縄キズナ宣言」が採択された。この宣言の原題は“The Sixth Pacific Islands Leaders Meeting-Okinawa'Kizuna'Declaration”(*1)と言う。
  後手後手に回る文部科学省の思惑をよそに、“Kizuna”は輸出されてしまうのだ。

「絆」を和英辞典(*2)で引くと、bond、またはtiesとある。英単語は意味の守備範囲が日本語より広いことが多く、海外在留経験のない私などはこの訳語を見ると、接着剤やネクタイ姿のサラリーマンの悲哀を連想してしまうではないか。漢字や和語の奥深さを再認識する。
  日本文化が育んだこの独特の「絆-きずな」のニュアンスをうまく輸出できることを期待してやまない。

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[参考文献]
(*1) R.M.V.Collick他編1995「新和英中辞典」研究社
(*2) 2012年5月27日付 朝日新聞

2012.7.15 掲載



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