第5回 クリスマスツリー露店とサンタさん
ニューヨークに暮らし始めて、初めてのクリスマスがやってくる。12月に入り、街のあちらこちらにイルミネーションが灯り、街角のデリ(コンビニ)やストリート沿いには簡単な木の枠組みに何十本ものツリーが立て掛けられ、あたり一面に新鮮なツリーの香りが漂っている。本物のツリーがこんなふうに売られているのを目の前にしてウキウキ度が高まっているのは私だけではない。
ところでこの大量のツリー、いったいどこからやって来たのだろう?ここイーストビレッジの玄関口、アスタープレイスで10年間ツリーを販売しているレジーンは、国境を越えカナダからやって来た。レジーンの露店で売られているツリーはカナダを始め、アメリカオレゴン州などから運ばれてくる。
「今年のニューヨークは暖かいから、お客さんの出足は鈍かったよ。ここ最近ようやく寒くなってきたおかげで毎日20〜30本売れていくね」と、サンタさんのような髭をはやしたレジーンは言う。
「夏の間は樹木を育てたり、紙や木材にするための木を切ったりするのが俺の仕事。冬はさすがに雪が深くなって仕事にはならないからね。」
カナダからやって来た彼はツリーの裏の車道に止めてあるバンで寝泊りし3週間目を迎えるそうだ。もちろん彼のバン生活はクリスマスまで続く。
気になるツリーのお値段の方は…。「小さ目のツリー(1mぐらい)で約20ドル。大きいのは(2〜3mぐらい)約150ドル。」この辺りのアパートは狭いためか、小さ目のものがよく売れているそう。私もいつか大きなツリーが飾れるような部屋に住みたい…と空想の世界に入るや否や、さっそくお客さんがツリーを買いに来た。「それじゃ。メリークリスマス!」と言葉を残してレジーンは仕事に戻った。
さて、ニューヨークのクリスマスといえば恒例のロックフェラーセンターのクリスマスツリーも見逃せない。今年のツリーは星条旗カラーの赤、白、青のランプ3万個が使用されている。点灯式直後の日曜日に見に行ってしまった私は溢れる人の波にのまれゆっくりと見る余裕が全く無かった。諦めて家路に向かおうと思うや否や、痛ましい光景を見てしまった。輝くツリーの前にはサンタさんと警察官。警察官はサンタさんに何やら事情徴収をしている様子。なんとこのサンタさん、寄付で集めた募金が入った白い袋をヒョイッと盗まれてしまったらしい。クリスマスで多くの人が寄付をしてくれただけに、サンタさんも悲しい表情でうな垂れてしまった。
ニューヨークは安全な街になったと聞くものの、サンタさんのプレゼントがぎっしり詰まった白い袋を盗むヤツがいるなんて…。しばし唖然としてしまったが、これもニューヨーク。
年末ニューヨーク旅行を計画されている方、人ごみには充分注意が必要だ。
前田直子
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