第83回 食べない勇気
今30代・40代の人たちの間でメタボリック症候群が問題になっているその原因の一つが、「出されたものは残さずに食べなさい」をいつまでも引きずっている、ということなのではないかな、と思います。
昭和36年生まれの僕ですが。
まさに、高度経済成長の時代に子供だったわけですが、どうしても食べきれなくて苦しいときにも、「食べ物は粗末にしてはいけません」系の、いろんなことを言われて叱られたものでした。
戦時中の食糧難の時代においては、それは当然のことだったのでしょう。
しかし、今、この飽食の時代。おかあさんがこどものために、カロリーの計算はしないまでも「このくらいなら食べられるでしょ」と経験から出したお料理ならまだしも、なにもかもが多め多めで盛られている外食で、この理屈はもう通らない時代になっていると思います。
「出されたものは残さずに食べなさいっ!!」が、まず基本。
「戦争中は白いごはんなんて食べられなかったんだから」に始まり。
「このお米を作った農家の方の苦労を考えなさい」とも。
「世の中には、食べたくても食べられない人がいるというのに、残すなんて贅沢です」とも。
でも、ちょっと待ってください。
なんで、粗末にしてはいけないのは「食べ物」なんですか?
そういう説教をした当時のオトナたちが支えた高度経済成長の時代に、中東から買った石油を使ってガンガン産業が発展したのはいいのですが、その結果、地球の温度が上がって、今大変なことになってます。
今、僕たちにさんざん「食べ物を粗末にしてはいけません」と説教してきた世代の人たちが使いまくってきた石油のせいで、僕たちはこの後の世代の連中のために石油を使えない状況になってしまったのです。
そして、高度経済成長の時代、子供たちには「食べ物は粗末にしてはいけない」と教えながら、「モノ」はどんどん捨てました。
今ではリサイクルに向かっているプラスティックも、紙も、食用油も、車も、電化製品も。東京湾にガンガン捨てました。
そのせいで、もうゴミを捨てる場所がなくなってしまいました。
そのツケが、今、僕たちの世代にまわってきているのです。
粗末にするつもりは毛頭ありませんが、メタボリック症候群の気配がありながら、「食べ物を残しちゃいけない」という呪縛にとらわれている皆さん、そういう「太平洋戦争の後遺症」から脱却しましょう。
「もうおなかいっぱいだな」と思ったら、その時点で残しましょう。そこから無理して「残しちゃダメなんだ」と食べ続ける、その部分が、内臓脂肪になっていくのです。
それがいやなら、食べる前に「すみません、ごはんは半分で」とか、「麺半分で」と言える勇気を持ちましょう。
かっこつけて、何も言わずに注文して食べきれそうにない状況に陥ると、また「食べ物は粗末にしてはいけません」の呪縛に襲われて無理をして食べてしまい、内臓脂肪が蓄積されてしまうのです。
現在食べている炭水化物を、せめて半分に。そのかわりに、野菜とこんにゃくと豆腐をどっさりいただきましょう。
スイーツや甘い飲み物は10分の1に、そのかわりにフルーツをいただきましょう。
そして、ちょっと視点を変えて、いつもと違う道を通って仕事に行ってみましょう。いつもの道じゃないところを通ると、たくさんの発見が待っています。
2009.9.7 掲載 |