第58回 鳩山由紀夫前総理会見 -宇宙人か友愛の伝道者か-
春節を控えた2月2日、鳩山由紀夫前総理大臣は満席のプレスクラブで友愛精神に基づく国内でのコミュニティー・サポート・システムの構築と日本外交の将来について講演した。9回目となる鳩山氏のクラブ講演は率直かつ友好的で、「たまにはこんな政治哲学を聞くのも悪くない」とべテラン記者たちに好評であった。
会見の模様は10台以上のテレビ・カメラと新聞・雑誌報道で読者の耳目に伝わっているので、「特派員クラブの窓から」では記者会見企画側ならではのやり取りを含めてロゼッタ読者に知らせたい。
ファースト・レディーに対する護衛(SP)
渡辺晴子(HKWメディア・リポート 日本):菅伸子夫人のプレスクラブ講演に護衛が付かなかった事実を報道した。ファーストレディーが拉致されたら日本の平和ボケを示す国辱になると方々からコメントされたが、鳩山内閣ではどうだったのか?
鳩山:(鳩山幸夫人について)最初は公的行事以外には護衛なしであったが、こちらから依頼してSPをつけた。
鳩山秘書補足:幸夫人は外交的に動かれた。総理夫人というだけで何もしない人もおり、予算(に限り)があるので(一般にはつけない)。
友愛の輪
マーティン・コーリング:意外と思われる友人は?
鳩山:亀井静香さん。なかなかの人物。私が総理時代は民主党の仲間より親身になって毎日連絡してくれ、「なにか自分が助けられることはないか」と言ってくれた。
ジョージ・バウムガートナー(スイス テレビ):(米国の格付け会社)スタンダード・アンド・プアーズは、日本の長期国債の格付けを(スペインより1ランク下の「ダブルAマイナス」に)引き下げた。この件で、菅首相が「そういうことには疎いので」と言ったのは言後同断。「聞いていない」という後講釈が事実であれば、危機管理上問題がある。
鳩山:(メディア)のぶら下り質問の前に官邸の秘書官たちが重要問題について議論し、総理にブリーフィングするのが習慣。「民間会社の格付けだが慎重にものを言わないと」など、質問を逃げる方法を知らない。官邸の秘書官たちは各省からの優秀な人だが、信頼関係がないから情報が上がってこない。小沢(一郎)さんの秘書たちは金銭でなく、小沢さんに人間的に惹かれている。
公開の講演会場でも鳩山氏の小沢氏に対する好意的な発言が続いた。
マーティン・コーリング氏、ジョージ・バウムガートナー氏 鳩山由紀夫氏、通訳高松氏、筆者(右より)
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リー・ミャオ(香港テレビ):尖閣諸島問題以来、日・中のサミット会談がない。現状をどう打開するのか?
鳩山:首脳同志の信頼関係を構築するのが重要。国会会期中ではあるが、(地理的に)近いので早く結びつける。民主党は議員が中国との信頼関係がある。小沢さんは毎年数百人の議員をつれて中国を訪問し、日・中関係を深めて温家宝首相とガス田共同開発問題なども話している。こんな人材を使って東シナ海を「紛争の海」から「友愛の海」としたい。
ダン・スローン(米国ロイター):4年間で5人もCEOが交代する日本。小沢さんは強制起訴されたが、彼が民主党総裁になることはあるか?
鳩山:経済的にも外交的にも国難の時には強いリーダーが求められる。小沢さんが無実を勝ち取り、日本のリーダーとなると期待している。
アンソニー・ローリー(シンガポール ビジネス・タイムズ):「東アジア共同体」構想を菅氏は破棄してTPP(「環太平洋パートナーシップ」)に向かっているが?
鳩山:私が菅さんに質問したいくらいだ。なぜ菅さんがTPPに傾いたのか解らない。国の開き方について、(反)小沢というより官僚の発想があるのではないか。私が総理の時には官僚は控えていたが、小泉・竹中路線、アメリカ重視が戻ってきたのではないか。農業、保険、メディアなど同時に開くより、バイ(二カ国協議)で順次開いてゆく東アジア共同体に関心を持ったほうがよい。メディアはもっと開くべきかも知れないが・・・(満場笑い)
与謝野馨問題
ゲプハート・ヒールシャー(ドイツ フリーランス):与謝野氏の民主党参加について。鳩山氏も政党を色々変わったが。
鳩山:私は政党を作ったことはあるが、政党を移ったことはない。信念に基づき政党に属し、信念と異なれば外に出てもよい。(しかし)与謝野先生は事実でない情報に基づいて予算委員会であれほど民主党を批判され、民主党を攻撃するために作った政党(たちあがれ日本)を出て民主党政権に入るのは理解できない。
会見後の記者仲間のコメント。「鳩山会見の影の主役は小沢一郎氏であった!」
また、与謝野馨氏については「日本が議会制民主主義国である以上、自民党比例区で当選した議席は“たちあがれ日本”の共同代表になる前に自民党に返却し、一民間人として政治活動をするのが筋ではないか」という極めて常識的なものであった。
「議員バッジをはずす」といって民主党代表を辞任した鳩山由紀夫氏が政界に復帰を宣言し、現在の泥沼的政治混乱を乗り越えてどう活動を続けるのか?ジャパンウォッチャー達は「新しい日本人の謎」として注目している。
2011.2.7 掲載
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