第79回 「教員の犯罪」について
皆さんこんにちは。今回も連載をご覧下さりありがとうございます。
いじめられている皆さんは、授業が再開し、つらい思いを抱えたまま登校しているのではないかと気になります。
前回の連載に、関係の連絡先を紹介しましたので、つらい時はこういったところに連絡して欲しいです。本当は身近で接している教員が救うのが最も良いことですし、私は常に生徒たちの様子に気を配っていますが、残念ながらさまざまな原因が重なり、教員の発見が遅れていることがあるようです。そういう時は、学校とは関係ない機関の方に話を聞いてもらって下さい。そこから良いアドバイスをいただけたり、また、勇気をもらえることもあると思います。
また、どうしてもつらい時は、学校に行かなくても構いません。教員の私がそう言うのもおかしいかもしれませんが、休むことは周囲への「疲れた」という大事なサインです。サインが出ることで、周囲が気づいて守ってくれるようになる場合もありますから、本当につらいと思った時は、「今日は学校に行きたくないから休む」と、保護者の方に言って下さい。
保護者の方も、それは重大なサインですので、まず朝のうちに「体調不良」と学校に連絡した上で、お子さんの話を聞いたり、改めて担任に連絡をしていただけたら、と願います。
また、現代のいじめで、教員や保護者の子ども世代に存在せず、そして見過ごせないのが「インターネットによるいじめ」です。帰宅してもメールや掲示板などで執拗な攻撃を受けることがあります。こういったことについては、携帯電話の使い方を学校で指導する一方、家庭でも「人の悪口を書いたりするためのものではない、掲示板に書き込んだり友達の悪口をチェーンメールのように回したら、即刻取り上げる」などの取り決めを交わしても良いのではないでしょうか。なお、携帯電話に関しては、連載第68回「携帯電話」について、をご参照下さい。
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今回のテーマは、「教員の犯罪」について、です。今年度は、全国各地で教員が犯罪行為をしたことで逮捕され、それが報道されることが多いように感じており、同じ立場の者としてつらく、また、怒りを強く感じます。
犯罪行為として多いのは、
などです。盗撮は、今年夏、「女性教員が修学旅行で女子児童の浴室を盗撮していた」というショッキングな事件も起こりました。これは、遊園地のプールで隠し撮りをしていたことで逮捕され、その際の取調べの課程で発覚した話です。動画を公開したなどの形跡はなく、「成長途中のきれいな体を見たかった」などと容疑者の教員は話したそうですが、それにしても、被害に遭われたお子さんたちのショックを思うと、本当につらいです。また、最近は脱法ハーブを吸引した、といった事件も見聞きします。
教員は犯罪行為を行なうと、罪の重さに応じ、懲戒免職、諭旨退職、また、停職数ヶ月などの処分を受けます。懲戒免職なら退職金は1円も受け取れない、あるいは本来受け取るはずの金額の一部しか受け取ることができません。停職数ヶ月でも、その後復帰しにくいので、退職届を書き、依願退職することが一般的です。
今年度私が報道で知った事例では、たとえば、「パン1つ、数百円の万引きで逮捕」された教員が、停職処分を受けたので、「退職届を書いた」事例がありました。まさか本人も、数百円の万引きで教員を退職することになるとは思っていなかったかもしれません。ですが、これが重い現実です。
また、先日、このような判決の話も報道で知りました。飲酒運転で懲戒免職になった教員(管理職)が、退職金の支払いを求めて提訴した裁判で、1審の地裁では教員の訴えが支持されたものの、2審の高裁で逆転判決が下り、「退職金の支払いはしないことが妥当」だとされたそうです。
性犯罪に関しては、このような事例も大きく報道されました。「盗撮で逮捕された教員が、停職処分を受けた。今までの同様の事例では教員が全員退職したが、今回の事例では本人は停職後の復帰を希望した。同じ学校に復職させることに保護者から大変な反発が起き、当面、同一都道府県内の教育研究所で研修を受けさせ、その後別の自治体の学校に勤務させる」というものです。
保護者の不安は当然だと思いますし、私がこの事例の教員と同じ学校に勤務していたら、その後一緒に働くのも不愉快極まりないです。過ちは悔い改める機会は与えられるべきだとは思いますが、盗撮や性的いたずらなどの場合は、性癖で、矯正するシステムが社会に広く確立されているとは言えませんし、生徒を標的にして再び過ちを犯さないとは言い切れません。教員を続けるにはふさわしくない人格の持ち主ですので、犯罪が裁判などで確定した時点で、懲戒免職にすべきではないでしょうか。
教員として過去の、また現在の職場を見渡すと、大多数の者はまじめに勤務していると思います。でも、「自分が犯罪行為をしない」観点での大学教育・講習を受けた記憶はありませんし、このような講習の話も、めったに聞きません。私は飲酒運転や盗撮などしないので、あくまでも想像の域を出ませんが、飲酒運転は「これくらい大丈夫」という勝手な思い込みが長年積み重なったものとも思われますし、盗撮などはもともとの性癖や、ちょっとした出来心などとも考えられます。
ただ、教員の犯罪が毎週のように報道される現実を見ると、残念ながら「自分が犯罪行為をしない、すれば職を失う」という教育・研修が必要でしょう。
現職教員は、「犯罪行為をしたら退職」と常に意識して行動しなくてはなりません。保護者の皆さんは、公立校ならお住まいの自治体の教育委員会、私立校ならお子さんの通学先に、「教員の犯罪を防ぐ研修はどのように行なわれているか、行なう予定はあるか」とお問い合わせしていただくことをお勧めします。
その際は、強い調子で「犯罪をするような先生はいますか?!」などと聞くのではなく、「犯罪行為をする先生はいないと思いますが、最近そのような先生の報道を多く見ますので、研修などの取り組みはされていますか」などとおっしゃると、問い合わせを受けた側も、不快感が少ない状態で対応をしてくれると思います。
残念ながら性犯罪などは、被害者である児童・生徒に教員が立場を利用して口止めさせることも多いのが現実です。「言ったら君が困るからね」など、ひきょうな言い訳で子どもに迫ります。
でも、当然放置すればお子さんの心が傷つきますし、被害が増えることも考えられます。お子さんの様子に気がかりな点があったら、直接聞いたり、学校のカウンセラーを利用してほしいです。カウンセラーや養護教員などとの連携で、事件が発覚することもあります。
教員が犯罪で逮捕されることは、どんなことであれ、直接関わる子どもたちに動揺を与えます。ですので、犯罪で逮捕される教員が減ることは、子どもたちにとっても幸せなことです。この原稿を発表することで、少しでも子どもたちの笑顔が増えるように、と願います。
【今回のまとめ】
- 教員は犯罪行為を行なうと、罪の重さに応じ、懲戒免職、諭旨退職、また、停職数ヶ月などの処分を受ける。懲戒免職なら退職金は1円も受け取れない、あるいは本来受け取るはずの金額の一部しか受け取ることができない。停職数ヶ月でも、その後復帰しにくいので、退職届を書いて退職することが一般的。過ちは悔い改める機会は与えられるべきではあるが、盗撮や性的いたずらなどの場合は、生徒を標的にして再び過ちを犯さないとは言い切れない。教員を続けるには不適切なので、犯罪が裁判で確定した時点で懲戒免職にすべき
- 「児童・生徒を犯罪から守る」視点で教員への講習や研修は実施されているが、「自分が犯罪行為をしない」観点での大学教育・講習はほとんど聞かない。残念ながら「自分が犯罪行為をしない、すれば職を失う」という教育・研修が必要なのが現実
- 現職教員は、「犯罪行為をしたら退職」と常に意識して行動しなくてはならない
- 性犯罪などは、被害者である児童・生徒に教員が立場を利用して口止めさせることも多い。お子さんの様子に気がかりな点があったら、直接聞いたり、学校のカウンセラーを利用してほしい
2012.9.4 掲載
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