●コンクールの審査経過
感想文コンクールに応募してくださったみなさま、審査員のみなさま、ありがとうございました。
一次審査は高校の現役国語教師で、ロゼッタストーンWEBで「教育カフェテリア」を連載中のつきのみどり氏と、NPO法人カプラー@せたがや国語力向上委員会委員長で、子どもたちに作文指導をしている高清水美音子氏にお願いしました。お二人の審査の結果、43名中19名の作品が最終審査に進みました。
*一次審査通過者は公表しておりませんが、参加者からのお問い合わせには、個別に回答いたします。一次審査を通過したかどうかをお知りになりたい方は、staff@rosetta.jp までご連絡ください。
( *高清水氏講評はこちら *つきの氏講評はこちら)
最終審査は作家で東京都副知事の猪瀬直樹氏と、哲学者でFD(教育方法の改善を目的とした組織的な取組み)がご専門の東海大学教授・芦田宏直氏にお願いいたしました。
一次審査を突破した方たちの実力は非常に伯仲しており、記述式評価の難しさを感じさせられました。猪瀬氏、芦田氏ともに、何度も応募作品を読み返し、時間をかけて真剣に選考してくださいました。最初はお二人の意見が分かれていましたが、最終的には両者が納得する結論に至りました。(*猪瀬氏講評はこちら *芦田氏講評はこちら)
一般部門は、「中高生ではないけれど自分も応募したい」というご意見があったので、急遽、追加で募集しました。ただ、ほとんど宣伝しなかったので応募者は少なく、こちらの受賞者はロゼッタストーン編集部で決めさせていただきました。
●「編集」とは何か?
『独立のすすめ』に関して、出版社として伝えておかなければならないのは、この本は福沢諭吉の『学問のすすめ』をただ現代語訳しただけでなく、大幅に編集を加えているということです。
編集部では、「いま、この原稿が編集部に持ち込まれたら、どう編集するか?」「中高生に読みやすい文章にするにはどうしたらいいか」と自問自答しながら、この本をつくりました。その結果、順番を大幅に入れ替え、今の時代や中高生にそぐわない話は大胆に削除することにしました。ただ、著者の意図は尊重しているので、掲載した文章に関しては、できるだけ忠実に訳しています。
ところで、中高生のみなさんは「本の編集」というものが何なのか、ぼんやりとしてしかわかっていないのではないでしょうか。(私自身が学生時代そうだったので)
編集者は、内容を読者に効果的に伝えるために、構成を考えたり、言葉づかいをチェックしたり、デザインを工夫したり、図版を用いたり、注釈をつけたり、見出しを考えたりします。諭吉の著作権はすでに切れているので、今回は著者の了解を得ることなく、こうした作業を行いました。みなさんが読んだ『独立のすすめ』は、そういう編集者の手が加わっていることをまず頭に入れてください。
みなさんは、どの章の感想を書くか選ぶとき、まず目次で見出しを確認しませんでしたか?実は「平等」「自由」といった章立ても、文章中の見出しも、諭吉が考えたものではなく、編集部が考えたものです。見出しにつられて読んでくれたら、その見出しは成功したと言えます。
ちなみに編集作業というのは、テレビや新聞、雑誌等でも行われます。放送時間の長さや紙面の大きさ、ページ数に合わせて、担当者が素材を取捨選択し、わかりやすいように加工して並べているのです。同じ素材でも、編集する人によって、全然違ったものになります。
『独立のすすめ』に興味を持った方は、ぜひ今度は『学問のすすめ』の訳本を読んでみてください(複数の出版社から出ています)。たぶん、『独立のすすめ』のほうがわかりやすいと思いますが、なぜ、そうなのか、どこが編集されているのかを比べてみてください。
さらに興味がある方は、『学問のすすめ』の原文にもチャレンジしてみましょう。昔の文体で書かれていますが、『独立のすすめ』を最初から最後まで読めた人なら、きっと読み通せるはずです。そこで、諭吉の直接の言葉を味わってください。
そこまでできたら大したものです。大人だって『学問のすすめ』の原文を読んだ人など、ほとんどいないのですから(あなたの国語の先生だって、読んでいないかもしれませんよ)。そうやって、少しずつ古典のよさに触れていけば、新しい世界が見えてくるかもしれません。
「編集」ということをより実感していただくために、入賞者以外の作品を抜粋、編集してみました。各作品の中で気になった部分を、他の作品とのバランスや文字数なども考慮して抜粋しています。あなたの作品も一部が掲載されているはずです。
(*中高生が読んだ『独立のすすめ』(全員の感想文を抜粋)はこちら)
いかがですか?入賞者に負けず劣らず、どれも力作です。一人の感想文も面白いけれど、こうしてみんなのエッセンスを集めても、興味深い文章になりますね。もっとも、みなさんの中には「もっと別のところを抜き出してほしかった」と思っている人もいるかもしれません。そう思ったら、自分ならどの部分を抜き出すか考えてみましょう。それが編集の第一歩になります。
『独立のすすめ』が、諭吉の考え方を知るだけでなく、編集するとはどういうことなのかを考えるきっかけになれば幸いです。
(ロゼッタストーン代表・弘中百合子)
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