夕方の「並木通り」は、昼間の「シャネル」や「グッチ」「ルイ・ヴィトン」の高級
ブティックが立ち並ぶ「ファッションストリート」から、きらびやかな「夜の銀座」
へと表情が変わりはじめるころ…… 。
歓楽街のネオンと共に、クラブへと向かう艶っぽい着物姿のマダム。
そばをすれ違うと、ほんのり「銀座の女」の香り。
『ふたご屋』は並木通りに面していて、1Fに「ブティック君島」があるソワレドビルの7Fにあります。
今回私が「ますいさくら」さんにお会いしたいと思ったのは、著書である『銀座のママが教える「できる男」「できない男」の見分け方』を読んだのがきっかけでした。
今回の「ファッションファイル」では、「銀座のママ」でありながら、今、多くの読者を引き付けている作家、
ますいさくらさんの魅力を「女性の生き方」と言う視点から「ファッション」に対する価値観も含めインタビューをさせて頂きました。
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「ふたご屋」名物のとても大きな水槽です |
「ふたご屋」の店内は「夜の銀座」の、しっとりとしたイメージより、ぐっと明るく、中央にはとても長い水槽があります。
なぜ、こんなに長い水槽が中央にあるのかとママに尋ねたところ、26歳で最初にお店を立ち上げたころには、 まだ現在の半分のスペースしかなかったそうですが、その後買い足して広げていった結果、現在の様な仕切りのある広い作りになったと言うことでした。
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有名人の方々がキープをされているボトルです |
今では「ふたご屋」の名物だそうです。
少し遅れていらした、ますいさくらさんは、私が思っていたよりも細くスリムな女性でした。
ブラウン色の長い髪が「サラサラッ」とバックに流れて、少しななめにうつむく表情はとても色っぽく、抱きしめると折れそうな女性・・・とは、きっとこんな女性のことを言うのだと思いました。
『ファッションについて』
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クラブのママと言うより、街を行くかわいいOLさんの様なスタイルです |
その日、ますいさくらさんは、ウエストをベルトでキュンと締めた「バーバリー・ブルーレーべル」の少し長めのジャケットを着ていらっしゃいました。
白神 :「今日はお着物でいらっしゃるかなと思っていたのですが・・・」
ますい:「着物は姉が着ています」(お姉さまは、ふたごの志保さんです)
白神 :「お着物はあまり着ないのですか?」
ますい:「着ないです。普段、直前ギリギリまで連載の原稿を書いて、
夜また家に帰って仕事をしてと言う生活で、すぐに動けるスタイルだとやはり洋服になります」
現在34歳の「ますいさん」のこだわりは、外見のファッションと言うよりは、ご自分の体型維持が最優先。毎朝欠かさずスポーツジムへ通っているそうです。
ますい:「34歳って言うと主婦の年齢、でも私の場合主婦とは違う何かがないとダメでしょ・・・そのためには、常に自分を律することが必要なんです!」
白神 :「ブルーレーベルはお好きなんですか?」
ますい:「姉がとてもブルーレーベルが好きで、私はすごく影響を受けやすいんですよ、かわいいし他のブランドに比べて安いんで大好きです」
白神 :「他に、ブランドやファッションへのこだわりはありますか」
ますい:「特にないのですが、例えばシャネルの様にそんなに高い服は買いません、安くても着ていて上品なものが良いですね」
白神 :「値段に関わらず、上品な着こなしはとても大切ですよね」
ますい:「お洋服にお金をかけることは、ただ私の2次的要素を高めるだけ、それによって誤解されることも多いでしょうから、
本当に自分に合ったものを着ている方が結局は良いじゃないかしら」
銀座で働く全てのマダムが、「ますいさくらさん」の様な感覚を持っているとは思いませんが、昔の様に銀座が「高級」「一流」と言われていた時代とは確実に状況は変化しているのかもしれません。
『 著書「できる男」「できない男」の見分け方について 』
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店内のウインドーに飾られている著書です |
これまで男性から見た「できる男の法則」と言うのは多くありました。ところが女性から見たものは意外に少なく、今回は「ママの視点」から是非書いてみたかったというのが、この本を出版したきっかけだそうです。
白神 :「本の反響はいかがですか」
ますい:「実際に取材が多くなってきているので売れているのだなという実感はあります。 ただ、もう気持ちは次の方へ行っていますから」
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現在、発刊されたばかりの新書です |
次と言うのは、5月21日に発売された『「できる男」の口説き方』と言う本のこと です。取材前にちょうど担当の出版社の方がいらしていて、まだ発売前の頃でした が、記念にどうぞと新刊を頂きました。
『作家と言うお仕事について』
白神 :「あの本で、お客様からこれからもずっと銀座のママをやっていくつもりなの?と聞かれ、「将来は物書きになりたいの」と答えていらっしゃいますが、もう実際に夢はかなえていらっしゃいますよね・・」
ますい:「私の中では作家は副業しないものだと思っているんです。やがて、いつか本当に物書きだけで食べてけたらいいなと思う。
今は、文筆させて頂いていると言う感じで執筆依頼がきて文筆すると言うカタチだけど、それがいつか好きなものが、 思った様に書けるようになれば、それが一番うれしいと思うの」
白神 :「もうだいぶ以前に16・17・18歳のころの自叙伝的なものを発表されていますが、それとは別のものですか・・」
ますい:「実話に基づいたものではなく、前向きな女性の小説とかね」
現在、ますいさんは講演の仕事もされていて、年内に講演をまとめた本も出版されるそうです。また、青春出版社からは「中村うさぎ」さんとの対談で『女が幸せになる101のヒント』が出版される予定です。
『10代の頃を描いた自叙伝的小説について』
白神: 「『傷つかずになんて生きれない』『優しさに理由なんていらない』『天使になんかなりたくない』の3冊を読ませていただいたのですが、ご自分の過去の経験がかなり強い様ですね」
ますい:「あの本を書いた一番の理由は、家庭内暴力の後遺症などで、小さい時にキズを負った女の子達に、
同じ様にがんばっている私がいるんだと言うメッセージを含めています。主人公が拒食症になったり、学校を退学になったり、
それでも前向きに生きていく女の子像を書いたんです。
部数は2万3千部ですけど、それでも作家としてやっていきたい私にとってはハウツー本が売れるより、うれしいことです」
『政治家であったお父様について』
白神 :「お父様についてお伺いをしてもよろしいでしょうか・・」
ますい:「父は今、実家で保育園と幼稚園をしております」
白神 :「お父様が市会議員や県会議員をされていたということで子供の頃の影響は、やはりとても大きいものでしたか・・」
ますい:「父は私が5歳ぐらいから市会議員ですから、小さい時から選挙事務所の中で、大人の世界で過ごしてきたので、
人を見る目を養うなど随分大人として育ってきたと思います。 父は選挙と言うカタチで4年に1度は試されるわけですから、日々とても緊迫した世界にいるわけです。 今、政治家の方はたくさんいらっしゃいますが、本当に政治がしたくて政治家をしている方が、とても少なくなっている様な気がしますね・・・」
娘にとって父親から受ける影響は意外に大きく、仕事を通して生き方を学ぶ様なところがあります。
作家になりたくてどんなことがあっても一途にその気持ちを忘れないと言う部分では、ますいさんは、政治をしたくて政治をしていらしたお父様とよく似ています。
< クローズド・ファイル >
今、本当に夢を持って生きている男性・女性はどのくらいいるのでしょうか….。
バンクーバーの丸紅商社からその後、様々な経験を経て26歳で思い切って銀座にお店を出され、
現在は作家としてご活躍をされているますいさくらさん。直接お会いし て、いつまでも変わらない夢をしっかり持ち続けている「力強い女性」だと感じました。
『自分はずっと作家になりたくて色々なところに応募していました。この仕事に入っ
て生活できる様になったら、やっぱり夢が忘れられなくてもう一回チャレンジ。で小
説を書いて2・3万部・・・このままでは芽は出ないのかなと思いながら、続けてい
くと今の様な良いお話がありました。
結局、誰でもいきなりは「ベストセラー」にはなれない、誰でも成功まではスキップできないから、全てやっていることは無駄ではないんですね。本当にやりたい夢だけはいつまでも持っていた方がいいと思います』
『誰でもいきなり「ベストセラー」にはならないの』の一言にはとても説得力がありました。
きらびやかな「銀座」の世界にいながら、「ファッションスタイル」も含め決して自分を見失わない、ますいさくらさん。夢を持って一途に生きることの大切さを、私個人がたくさん教えられた今回のインタビューでした。