例えば、ある人が
とSNSに写真を載せたとする。それに対して、知人が
とコメントする。本人の後ろの壁にかかっているネコの写真のことだ。このような時、
と返すのがSNSの常套句となっている。
「こっち?」でも「あっち?」でもなく必ず「そっち」、あるいは「そこ?」で ある。もちろん、「(あなたが注目しているのは)こっちではなくてそっち(なのですか)?」という意味である。
このような指示詞は「これ」「それ」「あれ」「どれ」を基本として、日本語として見事に体系づけられており、省略して「こそあど」と呼ばれることも多い。
使い方としては大きく「文脈指示」と「現場指示」に分かれる。
「文脈指示」とは、
上司:「○○さん、例の件どうなった?」
部下:「あ、あの見積もりですね。」
上司:「そっちじゃない、納期の方だよ。」
というような会話の時の指示詞であるが、「現場指示」は文の中での話題ではなく、物理的に存在する物を言い表す場合のことである。
「現場指示」はさらに「距離区分説」と「人称区分説」の二通りあるというのが定説である。
「距離区分説」は外国人を対象とした日本語教育の場面ではわかりやすく、話し手の近くにあるものから順に「これ」、「それ」、「あれ」と使い分けることである。昔ながらの英語導入教育の
- This is a pen.
- That is a pen.
とも共通性があるのでわかりやすい。私たちは英語のthis,thatの使い方はこんな単純なものだけではないことがその後の学習でわかってくるのだが。。。。
さて冒頭の「そっち」は、この「距離区分説」だけでは説明しづらい。Aさんが「そっち」と表現した写真は自分のスマホやPCの画面に映っているから「こっち」と言ってもいいからである。
[参考文献]
■新井弘奏・他2011『日本語教育能力試験完全攻略ガイド第二版』ヒューマンアカデミー
■原沢伊都夫2010『考えて、解いて、学ぶ 日本語教育の文法』スリーエーネットワーク
2018.11.15 掲載
|