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第96回「インスタ映(栄)え」


最近テレビ番組で、信じられない会話を耳にした。
ブティックで知人同士が一緒に服を選んでいる。

「これとこれ、どっちがいいと思う?」
「う~ん、こっちの方がバエルよ~。」

すっかりおなじみになったこのインスタ映え(*)という言葉。2017年の流行語大賞にも選ばれた。 (*) 以下、「映え」表記に統一する)

写真中心のSNS、インスタグラム(instagram)に載せた時に見映えの良い写真のことを「インスタ映えがする」とユーザーが言い出したことから、今や他のSNSも含めて「インスタ映え」と言う。

インスタ映えの「バエ」は後要素の「ハエ(ル)」という発音が前要素と連結されたことによって、言いやすいように「ハ」の音が濁音化したものだ。専門用語では連濁という。どういう時に濁音化するのかは、なかなか一言では言い難いが、前述の若者は元々の「ハエル」という言葉を使ったことがないことが推測される。「見映え」、「出来映え」も同様に考えているのだろうか。

このエッセイでは、若者が生み出す言葉の使用を一概に批判するわけではなく、その発生過程を研究し、言葉の変化を見るのを楽しんでいるのだが、さすがにこの「バエル」には驚いた。なんと、Yahoo!知恵袋では、「映えるはバエルと読むんですか?」という質問・回答が大真面目に語られているのだ。

今度、どんどん世代交代が進んでいくと、ファッション業界で「あなたをバエさせる〇〇〇」などというキャッチコピーが出てくるかもしれない。

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いかにも国民的社会現象のように言われているが、フォロワーは全国民のわずか4%弱。

[参考文献]
Yahoo!知恵袋(映えるの読み方って「はえる」か「ばえる」どっちですか?教えてください)
■新井弘奏・他2011『日本語教育能力試験完全攻略ガイド第二版』ヒューマンアカデミー

2018.10.15 掲載



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