① あの娘(こ)のプロフィール写真って、盛ってるよね。
……という表現が普通になってしまった。元々、女子高生言葉とされていたが、今ではかなり上の年代の者でも使う。①の場合は必要以上に化粧をしている様子を表しているが、
② 昨日のあいつの話は盛りすぎだ。
……では、自慢話か失敗話を誇張している様子を表す。共通しているのは物(者)を実態以上に加工していることだ。
十年ぶりに改訂版が出て話題になった広辞苑では七番目の意味として、
が盛り込まれた。
このように、文章中に新しく字義を挿入するという意味でも、「盛る」があるという語釈が広辞苑には入っているが、筆者の感覚ではこの場合は、複合動詞「盛り込む」にすることがほとんどだと思う。
日本国語大辞典(小学館)第二版(2001)では言葉の意味を発生から派生順に並べられていて、興味深い。
「盛る」
- 器をいっぱいにする
- うず高く積み上げる* )
- 酒を飲ませる
- 毒薬を飲食物中に混入させる
(5.以下略)
と記され、「おおげさにする」は当然まだ書かれていない。
また、「盛る」を使った複合動詞としては
③ きのうのコンパは盛り上がった。
という表現が1970年代に流行(はや)り出し、当時は「盛る」本来の意味とは違うことが新鮮だった。「盛る」は元々物理的に高く積む意味なのだが、「盛り上がる」は自然な精神的高揚を表すからである。元々、「盛る」には他動詞の意味しかないが、「上がる」との複合動詞にすることにより、自動詞の分野にも進出したのだ。(つづく)
[参考文献]
■北原保雄・他編2001『日本国語大辞典第二版』小学館
■新村出・編2018『広辞苑 第七版』岩波書店
2018.6.15 掲載
|