このエッセイでは前回、造語「和語+化」(「見える化」など)を、第73~74回では「漢語のひらがな表記」を指摘したが、最近になって今度は転成名詞の増殖が気になってきた。
今回表題にした「変えるを仕事にする」は駒場弘樹著によるベストセラー「社会を変えるを仕事にする」からの引用である。動詞をそのまま目的語に使っている。通常、目的語は名詞である。従来感覚であれば、
にするか、形式名詞「こと」を使って「社会を変える」を従属節にし、
とするかのどちらかであろう。
そして、格助詞「を」がこの短い間に連続するのも気になる。みなさん、この
をワープロで打ってみていただきたい。いろいろ指摘が出てきて(ワープロの「大きなお世話」機能とも言えるが)、スムーズに変換されないことがわかるだろう。
この場合の「変える」は転成名詞と呼ばれる。転成名詞とは動詞、形容詞がその形を変えた上で名詞として慣用的に使われる形である。
動詞の場合、例えば、
- ○○選手の走りは天才的だ。(五段活用動詞「走る」の連用形)
- 30分後には大きな津波が来る恐れがある。(下一段活用動詞「恐れる」の連用形)
などの例があり、主に連用形がそのまま名詞になる。
ただし、使用される動詞は限定的であり、連用形以外の例は知らなかったのだが、今回の「変える」が終止形であることに特徴がある。(つづく)
[参考文献]
ヒューマンアカデミー編2011『日本語教育能力検定試験完全攻略ガイド第二版』翔泳社
高見澤孟・監修2004『新・はじめての日本語教育』(株)アスク出版
2017.7.15 掲載
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