WEB連載

出版物の案内

会社案内

第79回「見える化」(1)


  • 弁護士会は、ブラックホールとも言える取り調べの過程を録音・録画して、「見える化」するよう求めてきましたが、・・・(福岡県弁護士会)

・・・というような「見える化」という言葉が普通になってきた。しかし、どうもこの表現には違和感を覚える人も多いはずだ。
最高検察庁が2006年夏から冤罪防止のために取り調べの録音・録画を試行し始めた際は「可視化」という言葉を使っていた。

その後、2011年の東日本大震災による原発事故に端を発した自然エネルギー活用の動きが加速化する。それに伴い、一般家庭での太陽光発電システムも推奨され、電力消費のピーク時での電力使用を控えることも提案された。時間帯別に電力使用量のデータを見ることのできるスマートハウスの販促では、「可視化」よりも「見える化」が広告によく使われるようになったのだ。

「見える化」が語感としてしっくりこないのは

  • 「和語の動詞+化」

という複合語だからだ。

もともと、「化」は中国伝来の漢語に接続する接尾語である。古来、有識者が書く文章、法律や行政用語は漢語の羅列だったのだが、平成に入ってその原則が崩れつつある。

庶民に寄り添った表現にという世の中の風潮によるのだが、漢語には同音異義語が多い事情もそれを後押ししている。
例えば、「可視化」の場合、文字を見ないで「かしか」と聞くと、すぐには意味がわかりづらい場合もある。(つづく)

[参考文献]
福岡県弁護士会
http://www.fben.jp/kaichou/20160701.html

2017.5.15 掲載



著者プロフィールバックナンバー
上に戻る