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第65回 「未来と将来」(1)


2015年1月、夜行スキーツアーのバス事故により、大学生が亡くなった事故で、

  • 13人の未来ある大学生が犠牲になった。

というような表現の報道が目立った。

筆者の感覚では、このような場合、「未来」ではなく、「将来」を使いたいのだが、最近は「未来」が使われることが増えた。
  他に転職サイトDODA(デューダ)の広告に、

  • いきたい未来がある~転職ならデューダ

というのもある。

「未来」というと、現在生きている人々のことではなく、何代か先の話に感じるのが普通だと思っていた。思えば、筆者が小学生の頃は、元旦の新聞の増ページ特集にバラ色の未来生活が踊っていた。曰く、「自転車のような乗り物が空を飛ぶ」、「外国の人と自動通訳機で会話ができる」類(たぐい)である。前者は、そう簡単に実現できそうもないことに感じるが、今でも、たとえば鳥人間コンテストというイベントが毎年開催され、人類の夢を叶えようとする人たちがいる。

これに毎年参加している愛媛大学航空力学研究会の人力飛行機は、ペダルを漕ぐ方式で2010年に769mを飛んだそうだ。ライト兄弟以前に模型の無人飛行機を開発した二宮忠八氏の遺志を継承しているのだそうだが、永遠の夢に終わりそうだ。

後者は限定的に実現しかけている技術ではあるが、実用性にはほど遠い。逆に現在のケータイ電話の隆盛を予測した人は少ないだろう。

いずれにしても、「未来の~」と聞くと、自分が生きている間の話ではないと感じたものだった。
  文法用語の「未来形」は一瞬でも後(のち)の出来事を表すが、その用法は一般的には例外である。

横浜には「みなとみらい21」という再開発地区がある。元々造船所や貨物駅だった地域が商業中心に再開発された場所だが、「みらい」が人をワクワクさせる。住居表示も「横浜市みなとみらい」だ。開発が本格化された1980年代以降、ひらがなの「みらい」表記もよく見かけるようになった。

また「未来」はその語感の良さから女の子が生まれた時の命名にも使われるようになった。有名な例ではアメリカ代表のスケート選手、長州未来がいる。

(つづく)

[参考文献]
2016年2月6日付け朝日新聞「樅の木峠(阿波別街道)」

2016.3.15 掲載



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