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第56回 「シェア(する)」(1)


facebookの普及により、「○○さんの言葉に感動しました。シェアします」などという表現がかなり一般的になった。他人(ひと)の写真付き日記などの書きこみに対し、共感を覚えた場合、その内容を自分のフィードにも表示させる行為である。書き込みを読んでも、内容にそれほど興味を覚えない場合はあえて「シェア(する)」とは言わない。

筆者が“share”という英語の用法を初めて意識したのは中学3年の頃、“BUS STOP”(*1) という曲の歌詞の内容を聞いた時である。

  • 〜Bus stop wet day, she's there
    I say please share my umbrella〜 ( *2)

という歌詞である。「(僕の傘に)お入りなさい」というのを“share”で表しているのが「洒落てるなあ」と思ったと同時に、たった12の単語で、

  • 「雨の日、バスの停留所にひとりの女。
    僕は『どうぞ僕の傘にお入りなさい』と言う。」

。。。。という状況が表現されていることに感心したものだ。メロディーに当てはめることのできる「意味」の量は英語と日本語とで、これほども違うのだ。

次に「シェア」が身近になったのが、「シェア」=「市場占有率」である。筆者が就職活動を始めた大学4年生の頃、業種毎の各社市場占有率に敏感になったからであった。
  「傘を共有しましょう」という「シェア(する)」はせいぜい二分割が限界だ。しかし、市場をシェアする場合は新規参入企業があれば、許認可業種は別として、いくらでも分割が可能である。新規参入しようとする企業から見ると、その新規参入分が業種全体の需要拡大となることもあるのだが、普通は「業種全体需要を拡大するため参入する」とは言わず、「シェアを取りに行く」と言う。全体需要拡大のためのイメージ戦略投資はもっぱらトップ企業が担うことが常だからだ。

例えば2008年に、サントリーが低迷するウィスキー需要回復のため、ソーダで割るハイボール需要を復活させようと大宣伝を行ったことがあった。シェアを取りに行くのではなく、業界全体の需要拡大を狙った戦略だったが、一般の企業は「他人(ひと)のシェア分を獲得する」方に目が行く。(つづく)


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(*1)イギリスのバンド、the HOLLIES,1966年のヒット曲
(*2)words & music by GOULDMAN GRAHAM KEITH

2015.6.15 掲載



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