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第54回 「魔女」(2)


そもそも、「魔女」とは何なのか。英語では“witch”と呼ばれ、辞書では「ホーキに乗って飛ぶとされる魔法使い(*)」と説明されている。この「ホーキに乗る」というのが「魔女の宅急便」でも踏襲され、荷物を届けることになるのだが、元々の魔女伝説では何のために空を飛ぶのかがいまひとつ不明確である。中世ヨーロッパでは、ある特定の女性が「あいつは魔女だ」と名指しされ、処刑されたという。15〜18世紀に渡って、53人の魔女が処刑されたらしい。多くの伝説が残っている割にはその数は少ないと思われるが、これはあくまでも記録上の数字だけであろう。

中世ヨーロッパにおける魔女は悪魔と契約を交わすことで金貨などを手に入れ、魔力を授かるとされていた。若い魔女は男を性的に誘い、老いた魔女は男を死の世界に連れ込むとされた。地方によっては、食人行為をするとか、オオカミに変身するとか、サバトに参加するなどという話がまことしやかに伝えられている。サバトとは、悪魔とのパーティ参加や性交を通じて悪魔から洗礼を受け、名簿に記載される儀式である。16世紀後半に南フランスで魔女狩りが激化した。当時、気候変動があり、厳冬が続いたことが背景にあるという。魔女狩りは権力によるものだけではなく、近隣の人たちによる私刑も多かった。

記録によるヨーロッパでの最後の死刑は1782年と記録されている。フランス革命(1789年)の2年後、フランスで魔術法令が廃止された。それまでの各領国(今でいう各地方)毎の司法権が中央集権化されたことがきっかけであった。当時の絵画には魔女を描いた作品が多く残されている。男性がコントロールできない女心(おんなごころ)への不安、恐怖が反映されていると説明されることが多い。男は女の手のひらの上でだけ動くが、男は女をコントロールできない。いったんヒステリーを起こされると対処できない。口げんかで、男は絶対女に勝てない。。。これらは現代でもよく言われている定説である。こうした女性への恐怖が魔女伝説だけでなく、現代につながる「魔女」言葉繁栄につながっていると言える。

(この稿、終わり)


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(*) witch:[n] a woman thought to have evil magic powers.Witch is often described in fairy stories as wearing appointed hat and flying on abroomstick.(Oxford Advanced Learner's Dictionary 5th Edition)

[参考文献]
目魔女コンテストHP
健部伸明・監修2009『知っておきたい伝説の魔族・妖族・神族』西東社
黒川正剛2011『図説・魔女狩り』河出書房新社
A.S.Hornby,Jonathan Crowther1995『オックスフォード現代英英辞典第5版』開拓社

2015.4.15 掲載



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