「あたし、低血圧だから、午前中はテンション上がんないのよねえ〜」とか、「あいつは飲み会の時だけ、テンション高くなるんだよね」というように使う。
元々、日本語としては材料工学系の専門用語としての外来語で、バネなどの張力の意味(1*)で使われていたようだが、手許の2002年改訂の国語辞書(2*)では、もはや原義の記載は無く、
テンション(名)[tension]
「(精神の)緊張」(テンション高い(=気分が盛り上がっている))
との説明がある。
英語にもある「緊張」という意味よりは、「気分」とか「高揚感」とかいう意味での「テンション」の方が今ではもうすっかり日本語になってしまった。
原義の張力の場合、その量的表現は「強い、弱い」だが、「高揚感」などの場合は「高い、低い」「上がる、下がる」となる。
この言葉を日常的に使い始めた年齢層はだいたい1980年前後の生まれ以降の人であろう。
半世紀も前に文章で「テンション」を使った特異な例がある。「日本民族は天孫民族といいますが、じつはテンション(緊張)民族です。」という浅賀ふさ氏(1961年毎日新聞)の文章である。日本書紀や古事記には天孫降臨という神話が記載されているのを踏まえている。
この文章では皇室の血統を神の子孫のように言う天孫民族説の「テンソン」と「テンション」を掛けている。いわば親父ギャグに類するようなレベルの表現だが、ユーモアを解せず、緊張しやすい民族であることをからかった内容は面白い。
後年普及する「テンションが高い、低い」表現のルーツとして貴重な一文ではあるが、この後、21世紀になるまで、日本語としての「テンション」は一般化しなかった。
ところが、筆者はこの言葉を1970年代前半の大学生の頃から日常的に使っていたのである。
[参考文献]
1986あらかわそおべえ「外来語事典」角川書店(1*)
2002見坊豪紀「三省堂国語辞典第五版」三省堂(2*)
「少納言」国立国語研究所データベース(3*)
1997「オックスフォード現代英英辞典(第5版)」開拓社
2012.11.15 掲載
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