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第13回 どじょう(1)


野田政権誕生で、一躍「どじょう」が脚光を浴びた。
  食用としては、うなぎに比べて今ひとつ表舞台に登場しない生き物だが、どじょう料理も昔からの伝統がある。うなぎと同じように蒲焼もあるが、卵でとじた柳川が庶民には一般的だ。ファストフード・チェーン展開化はされておらず、どじょう料理店には独特の風情と趣がある。

料理屋の看板には「どぜう」と書かれているのがほとんど。ははあ、これは歴史的仮名遣いが残っているんだなと思ったのだが、本来の「歴史的」には「どぢゃう」なのだそうだ。漢語での発音を基にして日本語化したときは「どぢゃう」だが、ある料理屋が江戸時代に「どぜう」と書いてみたところ、それが広まったらしい。

毛筆で書いたときに「どぢゃう」より「どぜう」の方が、ぬるぬるした感じが出たのではないかと思う。歴史的仮名遣いで「ぜう」と書いて、「じょう」で発音する例があるからスムーズに定着してしまったと言う。
  また、漢字ではいくつかの表記があり、「泥鰌」が主流なのだが、この「鰌」の字の発音は本来は「シュウ(シウ)」なのだから、またややこしい。

この歴史的仮名遣い、筆者の世代では学校で体系的に教わった経験がない。表記と発音が大きく違うのは助詞の「は」、「へ」、「を」くらいだからだ。厳密に言うと、例えば「映画」のような場合は表記が「えいが」、発音が人によっては「エ−ガ」と違っているのだが、人々はほとんど違いを意識していない。
  筆者は一語一語、この歴史的仮名遣いを書けと言われても正確に答える自信がない。

(つづく)

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2011.11.15 掲載



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