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第9回 「イケメン」


もはや、流行語を超えて俗語として定着した言葉である。
  若い女性から見た「顔立ちが魅力的な若い男」を表す。この言葉が出る前は美男子、ハンサム、二枚目などが使われていたが、それよりはインフレ傾向で使われ、とにかく若い男には「イケメン」と言っておけば無難だと言う勢いだ。

「イケ」の部分は「(酒などの飲みっぷりが)行ける口ですか?」などと、筆者のひとつ上の世代で使われていた言葉の省略である。
  それでは「メン」は何だろう。
  ある大学の学生、五十余人に聞いてみたところ、55%の人が「MEN」(MEN'S、メンズを含む)、残りが「面」と認識していたそうだ。
  サンプル数が少ないことを考慮すると、両派の勢力はほぼ拮抗と言ってよいだろう。

また、言葉に興味がある方々に聞いてみると、当初は「メンズ」だったが、だんだん「面」の色彩が強くなったのだろうと答える傾向がある。
  ウィキペディアによると、雑誌「egg」1999年1月号で編集者の矢野智子が「イケてるメンズ」の略として使用したのが最初だと言われているそうだ。

「イケてる」は、「行ける」が接続助詞-補助動詞を伴って、
  「イケテイル→イケテル→イケル→イケ」と変化、省略されたと思われる。

「メンズ」の「メン」は「MAN」というよりも「MEN」だろうから、「ズ」は英語で考えると複数ではなく所有格を表すはずだ。。。。となると、「MEN'S FASHION」か、「MEN'S LOOK」の略だったのではないかと思う。この雑誌が女性向けファッション誌であることからも、そう考えるのが妥当であろう。
  ところが広辞苑第6版では「「いけている」の略「いけ」と顔を表す「面」とをあわせた俗語か。多く片仮名で書く」とある。

筆者も「イケメン」と聞くと、「面」を思い浮かべていたのだが、2010年に韓流ドラマ「美男(イケメン)ですね」が放送され、今月からはリメイク版(TBS系)が始まった影響で、「MEN」の勢力が拡大する傾向になるはずだ。

仮説だが、流行の最先端でこの言葉を使い始めて、使い続けている人は「MEN('S)」、世の中の若者を真似して使うようになった人は「面」と認識しているのではないかと考える。

(次回へ続く)

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協力:伊東浩一(画家・熊本学園大学教授)

2011.7.15 掲載



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