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第8回 「シマ」


私が以前勤務していた会社では、向かい合いの座席が約10人分位のひとかたまりとなり、それが何グループ分か、大部屋に配置されていた。
  まあ、TVドラマに出て来るようなお洒落なオフィスは別として、どこの会社でも同じような配置だと思う。
  その一グループは、ほぼ各部署毎の区画となっている。私の会社ではその区画を「シマ」と呼んでいた。OLの娘に聞いても、名古屋の親戚に聞いても「シマ」と呼んでいるらしいので、この呼び名は一般的のような感じがする。

* * * * *

さきごろ、枝野官房長官は地図上での無名の島に名前をつけることを提唱した。確かに琉球の島など、名前もつけていないのに領土だとは主張しづらい。

ところで、琉球の島では集落の最小単位も「シマ」と言うことがあるらしい。琉球地方では古代大和言葉の言語や意味が残っていることが多く、興味深い。
  「島」での「シマ」は三方を山で囲まれ、前面は海に面している。なぜ、海に浮かぶ「島」と同じ呼び名をするのか? 理解し難いようで、実はわかりやすい。

つまり「組」用語の「シマ」と同じなのではないのか? こう言う例えは抵抗があるかも知れないが、共通点は多い。古代の人類は外界、つまり「島」を一歩出るには方角だけを頼りに荒波を乗り超えて何時間、あるいは何日間かかけて他の「島」に行かなければならなかった。そして他の「島」にはどんな人が住んでいるかわからない。もしかしたら拉致されてしまうかもしれなかった。

暴力団の「シマ」も見事に同じだ。他の「シマ」に行ったら何をされるかわからない。そもそも「シマ」を抜け出るのはたいへん。
  翻(ひるがえ)って、会社の「シマ」を考える。他のセクションに行って、何か提案すると、たいてい何か反論される。建設的な反論ならよいけれど、多くはそうではない。学生運動華やかりし頃、セクショナリズムという言葉が流行(はやっ)たが、会社では「シマリズム」だ。

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[参考文献]荒木博之 1994 中公新書「日本語が見えると英語も見える」

2011.6.15 掲載



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