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第4回 「ヤバイ!」


元々はアウトローな方々の隠語だったのが、確か1960年代に一般化したもの。

手許の広辞林(1958,三省堂)には「官憲の手配がきびしく危険である(隠語)」とあり、この頃にはまだ戦前社会の残滓が見られる。例えば、「あのセンコーの授業は予習していかないとヤバイ」などというのは教師=官憲と見立てた用語であろう。このように一般市民用語化された後も「(規則、規範などに反して)まずい」意味で使われてきた。ところが、2005年頃から若者の間で意味が転移し、むしろ肯定的な用法が目立ってきた。

【用法1】
(女装コンテスト出場の男性を見て)「特に 眼と脚がヤバイ」(TV.「笑っていいとも」より)
・・・・・「予想以上の高い評価」を表現する。これほどまでに女性っぽいとは意外だ。素晴らしいということだ。

【用法2】
(街を探訪して、旨い店を見つけて)「****のラーメンがヤバイ!」
・・・・・一般人ブログなどでの使用例多数。これは(今までこの店を発見できなかった)自分がヤバイという意識を内包している。

【用法3】
「ヤバイ、スゴイ、こんなループ」(SOUND & RECORDING MAGAZINE,リットーミュージックより)
・・・・・・ループとはハウス系音楽に使用するためのリズムやフレーズの繰り返しである。これは用法2と似ているのだが、用法2が書き手の内省的な想いに重点を置いているのに比べ、こちらは初めて公衆に披露するときの先端者としての先取り意識〜つまり、「おまえらは知らね〜だろ意識」に立脚している。お勧めの店、テクニック、ファッションなどの紹介に多用される。

この三用法に見られるように、つまり、否定的な「ヤバイ」が肯定的な意味に転化するような現象を学界ではsemantic bleaching (意味の漂白化)と分析するのだそうだが。。。
  と言っても、それには否定的な意味の裏打ちがあるのだ。

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2011.2.15 掲載



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