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ヤブヘビ? 橋下発言

5月13日、記者団の取材に応じての「慰安婦は必要だった」という橋下発言は、イギリスでも報じられたようです。が、1市長の個人的発言ということもあってか、さほど大きい扱いではなかったので、まずはご安心ください。報じられなかったか、見逃したかは、わかりませんが、テレビでは見ませんでした。いずれにせよ、日本のような連日の報道ではなく、見逃したらそれっきりくらいな報道です。日本人の恥ずかしい発言が報じられると、海外に住む日本人としては身のすくむ思い。橋下が首相とかじゃなく市長でよかった。

というわけで、どう報じられたか、ネットで探しました。視点のはっきりした報道になっていたのが、ガーディアン紙です。
  ナショナリスト市長が慰安婦は必要だったと言ったと書いています。維新の会の説明の中には、石原慎太郎をどぎついナショナリストとも。記事後半で、下村文化科学相や、維新の会の小沢鋭仁議員などの発言も紹介して、国や維新の会の公式見解でないことは、はっきりさせています。

    ■Japanese mayor says second world war 'comfort women' were necessary
    http://www.guardian.co.uk/world/2013/may/14/japanese-mayor-comfort-women

27日釈明会見の記事でも、沖縄の米軍兵士に風俗の利用を勧めたことについて米軍と米国民に対して詫びながら、慰安婦についての発言については詫びていないと、手厳しいです。

    ■Japanese mayor apologises for saying US troops should use sex industry
    http://www.guardian.co.uk/world/2013/may/27/japanese-mayor-toru-hashimoto-comfort-women

両方の記事とも、慰安婦を説明する部分にリンクが張ってあり、元慰安婦のインタビュー記事に飛べるようになっています。そのインタビュー記事には、日韓の慰安婦問題がざっとわかるように日本政府のこれまでの対応も書いてあります。
  橋下市長は、日本だけじゃない、ということも言いたいようですが、結果的に、日本のした酷いことをあらためて印象付けてくれました。ヤブヘビ?

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人権活動家でもあるアンジェリーナ・ジョリー
第62回 ベルリン国際映画祭

市長の、日本だけじゃない、を、戦時、女性への性的虐待があったのは日本だけじゃないという意味にとると、そうだろうとは思います。
  私はニュースより映画を見ている時間の方が長いくらいで、そういう情報もほぼ映画からです。最近では、昨年のベルリン映画祭で見たアンジェリーナ・ジョリーの初監督映画『In the Land of Blood and Honey』から、ボスニア紛争時の女性に対する戦争犯罪を知りました。難民キャンプを訪問しているジョリーは、紛争を生き延びたボスニア女性から話を聞いて、この映画を作っています。
  性的暴行を受けたとわかる女性の惨たらしい遺体もあるスリランカの紛争地を撮ったドキュメンタリーが、英国会で取り上げられたこともあります。
  日本に限らず戦時にはそういうことが起こりうるとしても、それを言っては開き直りととられるのが落ちでしょう。

ガーディアン紙の記事に戻ると、日本だけじゃない、と、他国が慰安婦制度を持っていた証拠も挙げずに言ったと書かれています。橋下市長は、国が関与したかどうかを争点にしていたのですね。国が女性を拉致したり、人身売買はしていないが、施設の管理、女性の移動、女性を集める要請には、軍の一定の関与があったと発言しています。
  国が直接女性を集めるのと、軍が誰かに依頼してやらせたのとは、大差ないのでは? 仮に全く国があずかり知らぬところで行われていたとしてさえ、そういう状況を生み出したのは戦争なのだから、戦争を起こしたということで国の責任は同じでは?
  ところが政治の世界はそうではないらしい。政治って、気持ち悪いです。

2013.6.8 掲載

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