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オリンピックは差別的?

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オリンピック抗議集会の女性たち

ロンドン五輪開幕のすぐ前に、“Justice for women”をスローガンとした抗議集会を取材。オリンピックの男女格差を超えて、いろいろ考えさせられました。

スポーツ界が男社会であるのは、そうだろうと思っていましたが、その度合いにはビックリ。IOC(国際オリンピック委員会)などオリンピック委員会の女性の比率を2005年までに20%にするという目標が、未だに程遠く達成できていないとは。

集会では、元ベルギー上院議長のアン-マリー・リザンが司会進行を務め、オリンピックの女性差別について各国の女性がスピーチ。中でも、イスラム圏の女性たちの訴えには力が入っていました。

イランで開催されているWomen's Islamic Games(女子イスラム競技会)にIOCからオブザーバーが行っていることは、知りませんでした。南アフリカでアパルトヘイトが行われていた際、黒人だけ隔離して競技させることは認めがたいとしたIOCが、女性だけ隔離して競技させることは認めているわけです。

イギリスにはイスラム圏からの人も多く、その女性の地位を思い知らされることがあります。名誉殺人と呼ばれる事件の被害者など、たいてい女性です。親の決めた人以外と交際し、一家の名誉を傷つけたという理由で、親族に殺された若い女性のニュースを、痛ましい思いで見ることも度々です。

残念ながら欠席となってしまいましたが、集会のゲストとしてワリス・ディリーの名前もあがっていました。子どもの頃に女子割礼を受けさせられたソマリア出身の女優/モデルのディリーは、割礼撲滅など女性の人権を守るための活動もしています。

性器を縫合したり、切除したりする女子割礼では、感染症などで命を落とすこともあるそうです。アフリカで今も行われている女子割礼について、ロンドン在住のアフリカの女性たちが語ったヒューマン・ライツ・ウォッチ映画祭を思い出しました。

抗議集会の声が聞こえたわけではないでしょうが、今回のオリンピックは女性に目配りしていたようです。イギリス歴史絵巻風だった開会式には、女性参政権の功労者エメリン・パンクハーストとそのグループに扮したドレスにタスキがけの一団が登場しました。BBCもオリンピックの女性史についてミニ特集を流していました。今回は、初めて全参加国に女性アスリートが含まれた大会だそうです。

逆に言えば、もともと男性のみ、それも白人競技者主体で行われたオリンピックが、今のような形にまでなったとも言えます。オリンピック競技としては初回となる女子ボクシングでイギリス選手が金メダルを獲得したことも、歴史的な出来事として報じられました。

それでも、オリンピックに対する理想を声にする人たちがいるのは、良いことだと思います。なでしこたちの活躍に声援を送りつつ、女性アスリート大活躍の日本やイギリスと違って、女性が自由にスポーツすることさえままならない国々に思いを巡らせています。

2012.8.25 掲載

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