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イギリスでも「福島原発は人災」調査報告を報道

あちこちでオリンピックへの秒読みが始ったイギリス、イブニング・スタンダード紙7月5日号「ロンドン・オリンピックまであと22日」の写真をあげつつ、オリンピックネタを書こうとしたら、その7月5日の紙面の中に、もっと気になる記事を発見。

イブニング・スタンダード紙
2012年7月5日付 イブニング・スタンダード紙
Japan's nuclear disaster was 'man-made'(日本の原子力災害は人災だった)
(ボタンをクリックすると写真が切り替わります)
    ■Japan's nuclear disaster was ‘man-made’
    http://www.standard.co.uk/news/world/japans-nuclear-disaster-was-manmade-7917331.html

オリンピックは後にして、今回はこちら「Japan's nuclear disaster was ‘man-made’(日本の原子力災害は人災だった)」でいきたいと思います。ちなみにイブニング・スタンダード紙は、ロンドンで配られている夕方発行のフリーペーパーです。ロンドンにはメトロという朝発行のフリーペーパーもあって、ロンドナーは出社時に駅でメトロを手に取り、退社時はイブニング・スタンダードを取り、読みながら会社へ、家へ運ばれるという具合。

「Japan's nuclear disaster was ‘man-made’」では、危機管理体制が機能しなかったとして人災とする国会事故調による報告と、日本の今の原発をめぐる状況として原発再稼動とそれに対する抗議デモをあげています。BBCなど他でも、ほぼ同じように報じていましたが、ガーディアン紙では事故調の黒川清委員長の「A disaster ‘Made in Japan’(「日本製」の災害)」という言葉も取り上げています。

    ■Fukushima reactor meltdown was a man-made disaster, says official report
    http://www.guardian.co.uk/environment/2012/jul/05/fukushima-meltdown-manmade-disaster

「日本製」の災害なんて言われたら、日本人以外は意見しづらくなるのでは? 日本のことに詳しくないと口を挟めない感じだし、たとえ詳しくても「日本ですから、日本人ですから」と言っているようなものに意見したら、日本全部、日本人全部が丸ごと対象の、人で言ったら人格攻撃みたいになりそう。

ガーディアン紙も、そのあたりを考慮したのか、同じ日本人、そのうえ新渡戸稲造まで引き合いに出して語れるような専門家のコメントを翌日のコメント・フリー欄に掲載。ロンドン大学島津直子教授の「The Fukushima report hides behind the cultural curtain(文化の影に隠れるフクシマ・リポート)」と題されたコメントです。島津教授は、「日本製」の災害という発言に対し、世界に対して詫びているようで、その実、混乱させると論じています。

    ■The Fukushima report hides behind the cultural curtain
    http://www.guardian.co.uk/commentisfree/2012/jul/06/fukushima-report-disaster-japan?commentpage=all#start-of-comments

コメント・フリー欄は、ガーディアン紙外の人のコメントが掲載される場で、島津教授のような学識者のほか、面白おかしく世相を斬るコメディアンなど多彩なコメンテーターがいます。ガーディアンは、オンラインではイギリスでデイリー・メイル紙に次ぐ読者数があります。デイリー・メイルはタブロイド紙、日本で言うスポーツ紙みたいなもの、なので、ガーディアンは、イギリスの真面目な新聞(?)としてはオンライン上で一番読まれている新聞です。イザと言う時、ずばり的を射て、しかも角が立たない当事国者のコメントが出せるよう、各国の記者やコメンテーターを揃えているのも、ガーディアンが読まれる理由の1つ?

2012.7.17 掲載

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