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Vol.10 - 偏差値27
秋の空や風が嫌いだ。
少々タフになった今でもたまにその淋しい肌触りにゾッとすることがある。
風がふと吹くだけで死んでしまいたいような孤独感を持つ人々がこの世には確かに存在する。
そんな時僕はいつも誰かに抱きしめて欲しいと思っていた。
だから今はそんなやつらを逆に抱きしめてあげたい。
僕なんかに抱きしめられても鬱陶しいだけだろうけど。。。
それでも。
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高校3年生の秋くらいから僕の思春期はさらに苦しくなっていったことを覚えている。
なぜなら全く将来のビジョンがないから。
進路がない。
No Furure
深くつきあっている友達も、色々なことを教えてくれる先輩もいないので、どう進路を決めていいのか正直よくわからない。
母子家庭だったので、どういう方向に行けとか強く言う父親みたいな存在もない。
まわりのみんなは受験をするといったり、早々に専門学校への道を決めたり。
僕はなんだかよくわからないまま呆然としていたのを覚えている。
あいつは自分と一緒で何も決まっていなだろうという奴が、話を聞いてみると早々と進路を決めていてショックに思ったり。
担任の先生によく呼び出された。
お前どうするつもりだと。
僕は何かおちゃらけながら、音楽を勉強しにロンドンにでも行きますかねーなどとふざけた事を答えていた。
そんな僕に先生はお前は進路よりも卒業できるかどうかのほうが不安だと冷静に言った。
僕の行っていた高校は偏差値50くらいで、ものすごく中途半端なポジションだった。
大学進学するのは本当にわずか。
皆、浪人するか専門学校へゆくかというパターン。
しかも浪人したとしても必ずしも大学へ行けるとは限らない。
2浪する人も多い。
そして恐ろしいことに例え大学に受かったとしても、それは名もない地方の大学。
メジャーな名前の知れた大学にいける人は本当に本当にわずかだった。
母親は僕に大学に行って欲しいらしかった。
色々な資料を取り寄せたりして何とか僕をそっちの方向に行かせようとする。
でも、僕は正直無理だなと思っていた。
なぜならその時の僕の偏差値は驚くことに27という信じられないくらい低いものだったから。
信じられる?
偏差値27だって。
簡単に言えば学校で一番か2番くらいバカということなんだ。
でもまあその理由は明確。
まったくもって完全に勉強しなかったから。
今でも覚えているけど本当にバカ。
テストなんかも平気で5点とかとったりする。
赤点だらけ。
今でも本当よく卒業できたなと思う。
とにかくそんな状態だから、大学受験なんてありえない話。
担任の先生にもおそるおそる、実は受験しようかと思うんだけど。。。と言ってはみたけど、"お前、何言ってんだ? 大学受験というのは本当に大変なことなんだぞ"
と一笑にふされたりしていた。
なので、そんなこんなで僕の進路はどこまでもどこまでも定まらず焦りだけを募らせながら時間だけが過ぎていった。
この頃、印象的だったことがある。
それはクラスの皆が一様にどこか絶望していたこと。
進学校でもない、就職校でもない。
上でもない下でもないポジションの学校の生徒たちは皆、将来に良いビジョンを持てず、何かこう諦めた顔をしていたのを覚えている。
進学したって名の知れた大学にはいけない。
就職したって出世できない辛い仕事が待っているだけ。
俺達の人生はもう終わりだな、みたいなことを言うやつが本当に多かった。
そして皆の顔が急激に老け込んだように見えた。
そんな中、僕はそんなリアルな感覚もなく、ただ漠然とこれからどうなってしまうんだろうと思っていた。
そして夜になると、とてつもない不安に耐え切れずビールをがぶがぶ飲み、タバコを吸いまくり、夜中のテレビを見続け、げっそりとした顔をして翌朝を迎えていた。
そんな17歳の頃。
MIZK 2005−9−18
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