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Vol.9 - 白いワンピース


この前、10年ぶりにライブというものをやってみた。
場所は下北沢ロフト。
道具はギター一本。
運良く(!?)台風が直撃するというイベントもありそれはそれで楽しかった。
来てくれた人、本当にありがとう!

image僕が唄を歌うには理由がある。
それは非常にわかりやすく、
「みんな僕の恥を見ろ!」
「僕のみっともない人生を見て、安堵しろ!」
ということ。

とても売れる音楽ではないだろうけど、しばらく腰をすえてやってみるつもり。
全ての孤独な友たちにだけ歌いたい。
あとインターネットでは決して伝わらない温度みたいのものを表現できたらいいなと思う。
機会があれば皆さんも是非。



****



夏休みが終わり2学期が始まる。
いつもそうだけど、2学期は憂鬱だ。
2学期の日焼けした明るいみんなの顔を見ると、夏休みというフィルターを通して周りの人がみんな僕を追い越して大人になっていったように思える。
僕は友達もほとんどいなかったし、深夜を徘徊しているような夏休みだから日焼けなんか全然していない。
そんな自分を凄く浮いているように思ったのを覚えている。


全然関係ないけど、この夏の終わり頃に僕は確か知り合いのM君という人と50CCのバイクで横浜あたりまでテントを持って旅に出た記憶がある。
(いくら友達がいないいないといっても、なんとなく一瞬気が合って行動することもある。だけどその後の関係が長く続かないんだけど・・・)

目的はなんだったんだろう。
ただ行ってみようぜということで行ってみたのかな。
それともこの頃特有の自分勝手なことを目的にしていたのかな。
ナンパでもしようぜ!
きっと俺達なら楽勝だぜ!
とか出来もしないことを夢想して。

image僕はトライという赤の原付バイク。M君は何か親にもらったとか言っていた古いバイク。
その2台で僕らは出発した。
千葉を出発し、東京を抜け横浜へと。
途中はりきりすぎたM君がスピード違反で捕まったり、狭い車の脇を通りすぎようとして車のサイドミラーにバイクをぶつけて、怖い兄ちゃんに"殺すぞお前"とか言われながらも僕らはなんとか夕方には横浜にたどり着いた。
確か岸壁みたいなところで海が見渡せたと思う。
広がる緑の芝生が美しかった。

なれないテント設置はすべてM君にまかせ、僕は焚き木とかを拾いに出た。
その辺をうろうろと歩き回る。
時刻はもう夕方で赤い夕日が海に沈む手前。
遠く広がる海を眺めながら何となく感傷に沈みながら歩いていると何かが視界に入った。
丘のようになっている芝生を下っていったところに何か動くものがある。
少し近づいてよく見ると僕らと同じ年くらいの男女だった。

僕はM君を呼んだ。
おい!M君、カップルだよ!カップル!
と、もの凄く恥ずかしいセリフを妙に興奮して喋った気がする。

僕らはそのカップルに釘付けになった。
男は背が高くいわゆるやさ男タイプ。
そして女は真っ白なワンピース。
僕はこの純白のワンピースに目を奪われた。
夕日に染まるオレンジ色と芝生の鮮やかな緑色、そして純白のワンピース。
その印象的な風景に釘付けになった。
そしてそのワンピースを後ろから抱きしめながら、楽しげに笑う男。

そしてそのうちそのやさ男とワンピースはその場に腰を下ろした。
ちょうど男のひざに女が座る感じ。
二人で海を見る。
そうこうするうちに男の手が白いワンピースの胸元へと伸びる。
そして中へと入れる。
くすぐったそうな顔をするワンピース。
でも嫌そうではない。
逆に何か嬉しそう。

僕はこの光景がいまだに忘れられない。
一言で言うと本当にうらやましかった。
恋人のいない僕にとって、本当に鮮烈な光景だった。
その場で地団駄を踏みたくなるくらい羨ましかった。


そんな夏の終わりの風景。
その夜はM君と二人で焚き火をしたりビールを飲んだりして無理に頑張って盛り上がろうとしたけど何となく不発だった。
一生懸命、俺達は男だけだけど楽しいもんねー。
彼女なんかいなくても平気だもんねー。
と、わざと明るくはしゃいでみたけどやっぱり無理があった。
この日の風景以来僕は男と二人で行動するのがしばらく嫌いだった。
(※今は別にそんなことない。)
旅なんてもってのほか。
一人のほうがいい。

そんな十七才くらいの頃。

MIZK 2005-9-2
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